研究課題/領域番号 |
20K01357
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
仲道 祐樹 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (80515255)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 刑事憲法学 / 刑事立法学 / 責任主義 / 憲法訴訟 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、刑事立法の活性化状況の中でのあるべき刑事立法分析枠組の構築という目標の下、立法者を直接拘束することができ、かつ、憲法訴訟の場において適用可能な立法分析枠組の構築を目指すものである。その際に、ドイツにおける刑事憲法学の手法を用いる点に特色がある。令和3年度においては、1) ドイツにおける刑事憲法学の基礎文献の翻訳、2) 刑法基礎理論、特に規範論の観点から見た刑事立法分析と刑事憲法学の理論的関係、3) 責任主義の憲法的地位に関するドイツの文献調査、4) 刑事憲法学の手法を用いた日本の罪数規定(刑法54条)の立法のあり方についての研究を実施した。 1) については、ドイツにおいて刑事憲法学の議論に大きな影響を与えているKlaus Ferdinand Gaerditz(aeはaのウムラウト)の論文(JZ 2016, 641)の全訳を行った。同論文は令和4年度中にオープンアクセスにて公表される。 2) については、ドイツの規範論の日本刑法学への影響を分析し、規範論の整理・精緻化作業を行った上で、それが立法分析に対して持つ含意を分析した。そこから、行為規範と制裁規範を区別し、それぞれについて憲法適合性の判断を行うという立法分析の暫定的モデルを構築した。このモデルの妥当性検証は令和4年度以降の課題である。 3)については、令和2年度に行ったドイツの判例分析の継続課題である。実際にドイツ憲法理論において、ドイツの責任主義の判例がどのような理論枠組みに基づいて正当化されると考えられているのかについての分析を行った。その具体的内容については、令和4年度中に論文として公表する予定である。 4) については、日本刑法54条を削除することは憲法違反になりうるとの主張を受けて、その指摘は刑事憲法学の観点からは妥当とは言えないとする分析結果を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の理論的部分については、当初予定していた責任主義の研究のほか、規範論との関係といった基礎理論的研究、罪数規定削除の憲法適合性に関する応用的研究、基礎文献の翻訳といった形で、当初計画からの発展的研究も含めて、順調に推移している。この部分については、想定以上に進んでいるといえる。 しかし、本研究課題は、刑事憲法学の手法に関する方法論的研究と提案を含むものであり、そのための研究手段として、ドイツにおける刑事憲法学の議論状況や現状について、ドイツの研究者から知見提供を受けること(講演会の実施や国際シンポジウムの開催)および現地調査を含んでいる。この部分については、新型コロナウイルス感染症の影響により、実施に至っていない。これは令和2年度にも課題として存在していたが、令和3年度においても方法論的研究の部分での遅れが取り戻せていないのが実情である。この点を加味して、「やや遅れている」とした。
|
今後の研究の推進方策 |
理論的部分については、責任主義の憲法的位置づけに関する研究が最終段階にあり、その完成をめざすことになる。 方法論的部分については、新型コロナウイルス感染症の影響を見通しつつも、オンライン講演会による知見提供の機会を集中的に設定し、方法論的部分の研究を進めることに注力する。徐々に外国人研究者の来日機会が増加していることから、招聘による集中的な知見提供も検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、予定していた海外研究者の招聘および渡独しての調査が実施できなかった。その旅費、謝金相当額が未使用となっている。次年度における招聘等の予算として使用する予定である。
|