研究課題/領域番号 |
20K01365
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
杉山 悦子 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (20313059)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 電子証拠 / 民事訴訟 |
研究実績の概要 |
2020年度は、民事訴訟における新種証拠、特に電子的な証拠に関するこれまでの国内の研究状況を整理して、問題状況の把握と関連する資料の収集に努めた。具体的には、電子証拠を裁判所に提出する方法、電子証拠の成立の真正、形式的な証拠力の問題、そしてそれと関連する原本性の問題、電子証拠の改ざんを防止するための保全措置、電子証拠の収集方法をめぐる問題を中心に、これらに関する文献を収集するとともに、整理を行った。 さらに、近年の民事訴訟実務において増加している、インターネットなどを通じた情報を証拠として用いることの可否とその限界について検討するために、実務家、研究者の参加する研究会に参加をして、訴訟実務の実情について知見を得るとともに、問題状況の把握を行った。加えて、このような証拠調べについては海外でも問題とされていることを確認し、ドイツやアメリカの状況についても文献収集を開始した。 電子証拠の提出方法をめぐっては、実務ではプリントアウトしたものを書証として提出することが多いが、このような実務が、民事訴訟のIT化が実現することにより、どのような影響を受けるのかについても検討を始めた。その検討にあたっての基本的な視座を得るために、民事裁判のIT化に関連する国内外の議論状況についても調査を行い、そして改正作業についての諸課題について研究会等で意見交換を行った。裁判のIT化とも関連して、新型コロナウィルスの影響により、行政文書等の脱ハンコ化が進められており、そのことが文書の証拠力に与える影響について検討を行い、研究会等で意見交換・提言を行うなどした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの影響により、国内外の研究会や、研究者や実務家との打ち合わせが延期となり、また、国内の図書館での文献調査や海外の文献の入手に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
日本の現行民事訴訟制度の下での、電子証拠をはじめとした新種証拠の取扱いについてのこれまでの実務や学説の状況について整理を行い、検討すべき課題を明らかにする。また、検討の結果を公表するための準備作業も開始し、研究者や実務家の参加する研究会などにおいて意見交換を行う。さらに、民事訴訟のIT化が進められることにより、新種証拠の取扱いに及ぶ影響について調査を行うために、文献調査等を通じてIT化の改正状況を追従する。 以上の作業に加えて、海外、特にアメリカやヨーロッパの民事訴訟における新種証拠の取扱いや証拠を収集する制度について、文献収集をしたり、学会や研究会に参加するなどして調査を行うとともに、その調査結果を随時公表するための準備作業を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、国内外で開催されるシンポジウムや研究会が延期となり、また、海外での現地調査が実施できなくなり、海外からの文献の入手に遅延が生じる等があった。そのため、次年度には、延期されたシンポジウム等に参加したするための参加費や通信費、国内外の状況を調査するための書籍を購入したり、文献を取り寄せたりするための費用、文献整理のための人件費、印刷費等に使用する予定である。
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