本研究は、情報提供モデルの限界と販売チャネルの多様化という金融市場の変化に対応した金融商品の推奨・販売ルールのあり方を明らかにすることを目的とするものである。 令和5(2023)年度は【展開研究期】として、前年度以前にリサーチを行ってきた事項を踏まえながら、金融商品の推奨・販売ルールのあり方について、監督法と私法といったハードローにソフトローも加えた総合的な観点から検討した。具体的な検討内容は下記のとおりである。 第1に、令和5年金商法等改正により金融サービスの提供関する法律が改正され、顧客等に対する誠実義務、すなわち顧客等の最善の利益を勘案しつつ、顧客等に対して誠実かつ公正に、その業務を遂行しなければならないという義務が明文化されたが、同義務の法的性質・義務内容は必ずしも明確ではなく、一種のソフトローである顧客本位の業務運営に関する原則との関係で検討を要する。そこで、同義務の意義について検討を行った。 第2に、顧客のニーズに応じた金融商品の推奨・販売のためには、販売対象となる金融商品それ自体の品質管理や資産運用業の規制のあり方も問題となるため、この点に関する検討を行った。 第3に、令和5年に、損害保険業において、保険金不正請求や保険料調整行為等の不適切事案が発覚したが、これらの事案の背景として保険募集のあり方が決定的な要因となっていることが指摘されているため、損害保険分野における保険代理店のインセンティブ構造を分析し、あるべき規制のあり方について検討を行った。
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