研究課題/領域番号 |
20K01374
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
荒谷 裕子 法政大学, 法学部, 教授 (80125492)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コーポレート・ガバナンス / 会社の機関構成 |
研究実績の概要 |
令和3年3月1日に会社法が改正されたが、当該改正は、研究課題であるコーポレートガバナンスに関する重要な法改正であることから、改正の影響・課題等について、上場会社の実務担当者、ビジネス法務専門の弁護士・機関投資家などからヒヤリング調査を実施した。また、令和4年4月4日に東京証券取引所の市場再編が実施され、開示要件等の上場要件が大きく変わることから、これに伴う企業のガバナンスの在り方、会社法と金融商品取引法の間で対応に追われる企業担当者から、その対応状況や問題点・課題等についてもヒヤリング調査を行うことができた。その結果、長引くコロナ禍の中で、今後の企業のグローバル・スタンスの在り方、あるべきコーポレート・ガバナンスの具現化、海外のいわゆるモノ言う株主とのコミュニケーションの有り様等について、試行錯誤が続ていることが明らかになった。 なお、中小規模の上場企業や株式公開を予定している企業においては、こうした急速なマーケット改革は、人的にも物的にも大きな負荷がかかっていること、実務界の関心・注意が、法律である会社法よりも、ソフト・ローであるコーポレート・ガバナンス・コードに向けられていることから、むしろ実態と乖離したガバナンスの形骸化・空洞化が進むことが更に加速化することが懸念される。 令和2年度以降、新型コロナの影響で6月・12月を中心とした株主総会の開催の在り方について、実務では模索が続いており、デジタル化の急速な普及と早急な法改正の必要性と、それに伴う企業のガバナンスの在り方が大きな関心事項となっていることが、実務担当者等とのディスカッションを通じて明らかになった。 なお、フランスにおけるコーポレート・ガバナンスについては、機関構成がわが国と類似していることから参考になることから、文献および判例研究会等を通じて比較法研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナの影響で、ヒヤリングを予定していた上場企業の実務担当者や弁護士等がその対応に追われ、予定していた調査が計画通りに進まなかったことに加えて、海外渡航の禁止により、EUやフランスに出張して、現地の規制当局・研究者・企業の実務担当者にインタビューを予定していたが、実現に至らなかった。 2021年3月1日にコーポレート・ガバナンス規整を強化することを主目的とした改正会社法が施行されたこと、新型コロナの影響もあって、改正会社法関係およびコーポレート・ガバナンス規整に関する文献の出版が遅れており、研究会も例年ほど活発に行われず、情報交換・議論の機会がなかなか確保できなかった。 以上の事情から、研究の進捗が予定より遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナの影響で、昨年度十分に実施できなかった上場会社の実務担当者、ビジネス法務専門弁護士・公認会計士に対して、2022年3月1日に施行された改正会社法と改訂作業が進んでいるコーポレート・ガバナンス・コードの問題点、4月に実施された東京証券取引所のマーケット再編の影響、いわゆるモノ言う株主とのコミュニ―ケーションの在り方等について対面でのヒヤリング調査を交えながら、研究を進める予定である。 なお、状況が許せば、EU・フランスにおけるコーポレート・ガバナンス規整の概要と課題について、実務関係者・規制当局・研究者との間で意見交換を実施するとともに、最新の論文・判例を通じて比較法研究を進めていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた海外出張が新型コロナの影響で全くできなかったこと。また、ほぼ1年間国内も移動制限がなされていたため、北海道・仙台、福岡での経済関係者・弁護士等への直接のヒヤリング調査が全くできなかった。加えて、海外の論文・資料の発刊の遅れ、およぶ流通上の経緯などから、必要な文献等を年度内に入手できなかったため。 今年度は、上記の予定を実行に移し、ヒヤリング調査・意見交換を積極的に実施したいと考えている。
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