研究課題/領域番号 |
20K01375
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高田 昌宏 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (50171450)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 民事裁判のIT化 / IT化社会 / 手続原則 / 民事訴訟法改正 / ドイツ民事訴訟法 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究の初年度として、社会のIT化が民事訴訟制度に及ぼす影響・変化を2つの方面から分析・考察することに着手した。 1つは、社会のIT化に対応する民事裁判手続のIT化を、現在わが国で進行中の法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会の審議状況に注目しながら考察を進めた。同部会で民事裁判のIT化に向け取り纏められた中間試案を基礎に、現時点での民事裁判のIT化に向けた民事訴訟法改正の方向性を確認するとともに、とくに争点整理、口頭弁論および証拠調べにおけるIT化導入に着目して、従来、民事裁判のIT化と、民事訴訟審理を形づくってきた手続原則(とくに口頭主義・直接主義・公開主義)との関係から、民事裁判のIT化が民事訴訟法に及ぼす影響に対する分析を進めた。分析の際は、わが国に先んじてIT化を進めているドイツの議論状況について、同国の民事訴訟法の最新の文献および研究論文を通じて情報の収集を行っている。 もう1つは、社会のIT化が直接、民事訴訟手続およびその担い手に及ぼす影響に関する考察であり、これについては、わが国の法実務の領域で、その問題性の認識が進みつつあることを確認するとともに、それに向けた対応を考えるべく、ドイツやアメリカでの同種の問題状況に対する取組みについて文献および情報の収集に着手し、その精読を進めている。 また、上記の2つの面の両方にわたって、世界的な新型コロナ感染の拡大が民事訴訟制度に大きな影響を及ぼしていることから、新型コロナ禍が民事訴訟法に及ぼしている影響についても、とくにわが国とドイツでの裁判実務の運用を中心に情報の収集に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、新型コロナ感染拡大のもと、大学研究室の利用および研究活動が大きく制限されたことにより、従前に比して、研究時間および研究の場を確保することが容易ではなく、また、利用できる資料・文献が制約され、外国の文献資料の収集も十分に行えなかったことから、研究資料、とくに外国法(ドイツ法)の文献資料(民事手続におけるIT利用とIT情報の扱いに関する文献資料)を目標としていたところまで精読および調査するにいたらなかった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度に収集した文献や資料を集中的に精読・分析するとともに、①民事裁判自体のIT化と、②社会のIT化が民事訴訟手続および手続主体に及ぼす影響、という2つの方向・方面のそれぞれで、引き続き、わが国と外国(ドイツほか)の両方の民事訴訟制度に関する情報および文献の収集を継続する。とくにわが国の民事訴訟法制の改革・改正の動向を注視するとともに、外国の動向にも引き続き目を向けることにする。新型コロナ禍のもとIT化の動きがさらに加速することが見込まれることから、それに対して民事訴訟制度および民事訴訟法規範がどのように対応していくかも検討していきたい。そして、その研究および調査の進捗に合わせて、研究成果を取りまとめ、公表することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ禍のもとでの研究室の利用制限により、研究室を含む研究環境(PCを中心とする)の改善を図ることができず、学会や研究会への出張の機会が失われたほか、研究に必要な文献・資料の収集も十分に効率的に進めることができなかった。そのため、次年度に研究環境の改善および文献資料の収集の強化に努めるべく、その費用に充てるとともに、研究会等への出張の機会があれば、その費用に活用する予定である。
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