研究課題/領域番号 |
20K01376
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
青木 則幸 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (30350416)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 担保法 / UCC第9編 / 対抗要件 / ファイル登記 / 譲渡担保 / 所有権留保 / シークレットリーエン / アメリカ法 |
研究実績の概要 |
動産の非占有型担保制度の立法について、現在、法制審議会での議論が進められており、担保権の公示制度を、「対抗要件」としての引渡しないし特例法上の登記と、優先順位の確保ための公示である「ファイル登記」に分けて、検討する案も検討されている。 本研究は、そのように、担保権の公示の機能を、対抗要件の場合と、優先権ないし順位の確保の要件にわけて考える概念が、米国のUCC第9編のファイル登記制度にも存在することを明らかにし、そのうち優先権ないし順位の確保の要件としての公示が、どのように設計され、判例実務上運用されているのかという点に関する実態の解明を進めている。 米国UCC第9編のファイル登記は、公示された情報をもとに、担保権の存在を調査する糸口を与える程度の公示制度であるが、原則は、目的物に担保権が付着している場合に、その担保権を第三者に対して有効にするという意味で「パーフェクトな権利にする」要件として設計されている。対抗要件類似の機能であり、担保権の実行時までには、この意味でのパーフェクトな権利であることが想定されている。 それに対して、他の担保権との競合や、差押債権者や設定者の倒産財団を含む概念であるリーエン債権者との競合の事案において、優先性ないし順位を確保する機能もまた、ファイル登記制度に託されているが、ファイル登記がこの機能を発揮する要件としては、担保権の付着を要件としていない。すなわち、前提としての物権変動の存否を問わない、公示による優先順位の確保を実現する制度としての機能も、上記の対抗要件と同一のファイル登記に担わせているのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動産非占有型担保権の公示制度の設計に関する日米の比較法研究を進め、その成果の各部をそれぞれ独立の論文として公表している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、研究計画の最終年度である。引き続き、動産非占有型担保権の公示制度の設計に関する日米の比較法研究を進める。とりわけ、ファイル登記が優先権確保の機能を担う場合の公示の在り方について、具体的な制度設計を明らかにし、米法の研究者との議論を通じて、比較の成果を検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍が長引き、海外出張が認められず、米国の研究協力者との対談を行うことができなかった。そのため、旅費相当分を次年度使用額とすることになった。コロナ禍の終息は現在なお予測不能であるが、所属機関の海外出張の規制が緩和されつつある。許可されれば、所属機関の長期休暇期間を利用して、海外出張を行う予定である。
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