研究課題/領域番号 |
20K01377
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
上田 純子 愛知大学, 法務研究科, 教授 (40267894)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 多階層株式保有 / イノベーション / フィンテック / 株主権の移転 / 株主権の帰属 / 比較考察 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、本研究課題に関する基礎固め、すなわち、関連する内外資料の収集およびフィンテックの実務的応用可能性に関する内外聞き取り調査などを中心に実施する予定であった。しかるに、令和元年度後半に急速に国境を越えて拡大した新型コロナウイルス感染症は、令和2年度も引き続き収束の気配を見せず、また、本研究課題が比較対象としていた欧米諸国のほうがかえって深刻な状況を示していたため、渡航調査等が一切行えなくなった。そこで、本研究の遂行としては、もっぱら、文献収集に頼らざるをえなかったが、それも、所属大学の図書館を通じて入手できる範囲にとどまった。とりわけ、フィンテックに関する基礎的知見について生の情報収集を行うことができなかったことは残念であった。 他方、新型コロナウイルス感染症の拡大により、企業実務においてICTおよびAIの活用の機会が飛躍的に拡大したことは、本研究課題にとって追い風となった。本研究課題申請の段階では対面が前提であった企業における会議体による意思決定のありかたも変わりつつあるようにみえる。 こうした予期せぬ外生的要因による実務の変化を取り入れつつ、内外株主と発行会社との間の株式保有を巡る複雑な契約関係の実態を概観し、発行会社との間の対話の促進および権利行使に関する法的問題点などを検討する論稿「株主総会プロセスの電子化-対話促進のための課題と展望-」を『企業法の改正課題』という論文集(法律文化社・近刊)に投稿することができたのは幸いであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症拡大のため、渡航を伴う研究活動は大幅に制限されたものの、机上で揃う資料等に基づいた一応の論稿はまとめることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、フィンテックの実務的応用の可能性を探るべく実態調査を行い、引き続き本研究の基礎固めを行うとともに、文献収集および文献解析を継続する。すなわち、海外渡航が可能となり次第、米国、英国、ドイツ、オーストラリアへ渡航し、現地の実務担当者、法実務家および研究者と面談し、各国における証券保有の実態および証券決済および株主の権利行使におけるフィンテックの活用、あるいは、法的論点への対応実態等に関し、情報を収集する。渡航できなかった場合には、オンラインによる外国実務家・研究者等との接続により、同様の情報収集を試み、本研究の中間成果へと繋げていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度に未使用額が発生した主要因は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う移動制限により、出張旅費が消化できなかったためである。令和3年度については、移動制限が緩和され次第、渡航調査を行いたいと考えているが、仮に移動制限が緩和されない場合には、旅費はさらに次年度に繰り越さざるをえないとしても、オンライン等の代替手段を用い現地情報の収集に努める。
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