研究課題/領域番号 |
20K01379
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
吉澤 卓哉 京都産業大学, 法学部, 教授 (50708360)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | インシュアテック / スマート・コントラクト / マイクロ保険 |
研究実績の概要 |
【1.スマート・コントラクト】インシュアテックの一つとして、スマート・コントラクトを取りあげた。スマート・コントラクトとは、契約の自動執行システムのことであるが、これが保険業に導入されるにあたり生じ得る法的論点について検討を行い、次の論文として公表した。吉澤卓哉「インシュアテックと保険法(3) ―スマート・コントラクト保険の契約法上の論点―」産大法学56巻1号(2022年4月)59-120頁 【2.マイクロ保険】マイクロ保険とは、低所得者層向けの保険のことであるが、日本を始めとする先進国では導入が進んでいない。けれども、インシュアテックの進展によって、この状況が劇的に変化する可能性があるし、また、低所得者層の生活や事業の安定化のためにはマイクロ保険の導入が不可欠である。そこで、日本におけるマイクロ保険導入に関して問題となり得る、保険契約法および保険監督法における法的論点について研究を行った。 【3.著書刊行】インシュアテックに関するこれまでの研究成果(上記2を含む)をとりまとめて、次の学術書として刊行した。吉澤卓哉『インシュアテックをめぐる法的論点』(2023年3月。保険毎日新聞社)全294頁。章立ては、第1章:「保険」概念に対する挑戦―P2P保険の「保険」該当性―、第2章:損害保険における損害填補原則の再検討―インデックス保険の「損害保険契約」該当性―、第3章:スマート・コントラクト保険―保険契約の自動締結および自動執行―、第4章:保険会社による情報の大量収集―「逆転した情報の非対称性」―、第5章:ビッグデータのAI分析―間接的なリスク関連要因を用いた保険引受―、第6章:マイクロ保険―日本でのマイクロ保険普及に向けて―、第7章:保険制度における「信頼」の変容―これからの保険法学―である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
インシュアテックの法的論点に関する個別研究を行い、学会報告を経て、論文発表を重ねてきた。受給前に発表したものを含めると次のとおりである。 ①吉澤卓哉「P2P保険の『保険』該当性」保険学雑誌644号(2019年3月)77-106頁、②吉澤卓哉「インシュアテックと保険法―保険会社による特定個人に関するリスク情報の大量収集が告知義務等に与える影響―」産大法学(京都産業大学)53巻2号(2019年7月)123-141頁、③吉澤卓哉「インデックス保険の「保険」該当性―定額給付型の損害保険契約―」産大法学53巻3・4号(2020年1月)187-227頁、④吉澤卓哉「情報社会の急速な進展による保険制度における「信頼」の変容―インシュアテックが保険制度における「信頼」に与える影響―」保険学雑誌649号(2020年6月)173-195頁、⑤吉澤卓哉「インシュアテックと保険法(2)―ビッグデータのAI分析に基づく間接的なリスク要因を用いた保険引受が告知義務規整等に与える影響―」産大法学55巻1号(2021年4月)161-187頁、⑥吉澤卓哉「インシュアテックと保険法(3) ―スマート・コントラクト保険の契約法上の論点―」産大法学56巻1号(2022年4月)59-120頁。 そして、それらの既発表論文に書き下ろし論文を加えて、「研究実績の概要」に示した単著を刊行した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年3月に刊行した単著『インシュアテックをめぐる法的論点』について、保険学者および保険業界から批判や意見をいただく。また、学会誌等に書評の執筆を依頼し、批判や意見を公表していただく。こうした批判や意見を踏まえて、自身の見解の見直しを行う予定である。 また、検討すべき法的課題が認められれば、当該課題の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
1.次年度使用額が生じた理由:新型コロナ感染症の蔓延のため、学会・研究会がリモート開催されることが多く、費消した旅費が当初想定よりも少なかった。そのため、次年度使用額が生じた。 2.使用計画:前年度末に刊行した研究成果(単著)を関係する学者および業界関係者に寄贈する費用、当該寄贈先から意見・批判を聴取するために要する旅費、本課題の新たな論点の研究に要する費用(書籍購入費、旅費等)に使用する。
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