研究課題/領域番号 |
20K01389
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 亘 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (00282533)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 法学の方法 / 法と経済学 / 社会厚生と公正 / 企業倒産法 / 会社法 / 公正概念の進化的起源 / 認知心理学と法 |
研究実績の概要 |
本研究は、法制度の評価基準、すなわち、法制度の望ましさをどのような基準に基づいて判断するかという問題について、主に私法上の諸制度を対象として、分析するものである。 本年度は、研究期間の初年度であったが、研究期間の開始前から進めていた研究を基礎とし、新たな視点から研究を進めることができた。特に、単行本『法解釈の方法論』に寄稿した論文「商法学の解釈の方法」は、民商法雑誌に掲載された同名の論文を基礎として、本研究で得た知見、着想を加えて完成させた業績である。そこでは、公正観念の進化的起源とそこから生じるバイアスの存在を指摘した上で、法制度の設計に当たって公正観念に無批判に依拠するのではなく、効率性ないし社会厚生に与える影響を十分に考慮する必要を論じたものであり、研究代表者が本研究を通じて発展させたい主張の大枠を提示するものになった。 また、本年度は、主に企業倒産法の領域で、法制度の評価基準の問題に留意しながら、具体的な制度について検討する研究も進めた。特に、担保法制の改正論の一環として導入の是非が検討されている事業担保法制について、継続企業価値の維持や担保権者のインセンティブの改善に結びつく等の理由によりこれを積極的に評価する立場から、具体的な制度の内容について検討を行った。この研究は、2021年度早々に、商事法務から出版される単行本(NBL別冊)としての一部として刊行される予定である。また、欧米、中南米及びアジア諸国の研究者と共同で進めている、法と経済学のアプローチによる企業倒産法制の比較研究 “Foundations of Corporate Insolvency Law: A Comparative and Economic Perspective”は、コロナ感染症の影響で対面の研究会は開催されなかったものの、オンラインでの研究会に参加し、議論を深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
法制度の評価基準の問題について、法と経済学、認知心理学および道徳哲学の知見を用いた理論的研究と、企業法を中心とした個別具体的な法制度の研究の両面から、分析、検討を深め、研究成果を発表し、または成果の発表に向けて研究を進展させることができているから。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、法制度の評価基準の問題について、法と経済学、認知心理学および道徳哲学の知見を用いた理論的研究と、企業法を中心とした個別具体的な法制度の研究の両面から、分析、検討を深めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に計画していた、企業倒産法の比較研究“Foundations of Corporate Insolvency Law: A Comparative and Economic Perspective”の研究会参加のための米国出張が、コロナウィルス感染症流行のためオンライン開催となり、対面での開催予定が2021年度に延期となったことから、渡航費、宿泊費を2021年度に使用するため。
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