研究課題/領域番号 |
20K01390
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
デ.アウカンタラ マルセロ お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (20565676)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 家族法 / 比較法 / 親子関係 / 非伝統的な家族 / 複数の実親 |
研究実績の概要 |
本研究課題の第二年度にあたる2021年度においては、前年度に引き続き、非伝統的な家族が置かれている状況や複数的な実親子関係に関する学説・判例の状況を把握することを中心に研究を進めてきた。とりわけ、法律上の複数的な実親子関係をめぐる議論の中で問題とされる家族の秩序の混乱については、性同一性障害特例法における子がない要件・未成年の子がない要件に関する日本の判例を用いて検討を行った。 最高裁平成19年決定および大阪高裁平成19年決定では、子がいる親の性別の取扱いの変更を認めることは、「女である父」や「男である母」の存在を認めることになり、男女という性別と父母という属性の不一致が生ずると指摘された。このような事態は、社会構成要素としての家族の秩序に混乱を生じさせる恐れがあり、子どもに心理的混乱や不安などをもたらす恐れがあるため、子どもの福祉の観点から問題となり得るとされた。この見解は、最高裁令和3年決定においても維持された。 しかし、最高裁令和3年決定での反対意見では、性同一性障害特例法改正後に子どもが成年に達していれば、「女である父」や「男である母」の存在は認められており、男女という性別と父母という属性の不一致が生ずる事態は容認されていると指摘された。そうなると、「女である父」や「男である母」の存在を法律上認めることが、未成年の子どもに心理的な混乱や不安などをもたらしたり、親子関係に影響を及ぼしたりするとは考えられず、子どもの福祉の観点から問題であるという説明には十分な説得力を感ずることができないと指摘された。 「父と母という二人の親」原則から離れて同性の実親を含む複数的な実親子関係について解釈論・立法論的な動向を分析することを目的とする本研究課題を進めていく上で、参考となる重要な示唆を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度に引き続き、2021年度においても新型コロナウィルス感染症拡大の影響に伴い、海外渡航ができず、外国法関連の資料収集等に支障が出たためである。また、研究代表者は、2021年4月から2022年3月まで、グローバル協力センター長に任命され、運営責任者としてセンターの管理運営を総括するなどの校務で多忙となり、計画の進捗に遅延が生じたためである。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、当初の研究計画に従い、非伝統的な家族における複数的な実親子関係の成立要件・法的効果についての研究を行う予定である。また、アメリカ・ブラジルにおける法律上の複数的な実親子関係に関する最新の動向について、サンパウロ大学図書館やアメリカ議会図書館での文献収集、情報収集、現地研究者への聞き取り調査の実施を行う予定である。ただし、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、海外渡航が困難な状況が続いているなど、未だ不確定な要素が多いため、今後の状況に応じて研究計画や研究スケジュールを柔軟に変更して進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時の研究計画では、第二年度である2021年度にヨーロッパ諸国における法律上の複数的な実親子関係に関する最新の動向についての情報収集等のために海外出張を予定していた(その旅費を2021年度に計上した)が、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により海外渡航が困難となったためである。また、新型コロナウィルス感染症拡大のため2021年開催延期となった国際家族法学会(ISFL)2020年大会が再度2023年に開催延期となったためである。今後の状況によって2022年又は2023年度に使用する可能性がある。
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