研究課題/領域番号 |
20K01393
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
洲崎 博史 京都大学, 法学研究科, 教授 (20211310)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 新株発行 / 新株発行不存在 / 新株発行無効 / 小規模閉鎖会社 |
研究実績の概要 |
本研究においては新株発行の無効・不存在が争われた裁判例の裁判記録を閲覧したり、訴訟代理人から紛争の背景事情・証拠入手手段について情報を得るなどして、紛争の実体(とれりわけ紛争当事者の会社での立場と証拠入手可能性の関係等)を明らかにして合理的な紛争解決手段を探ることを企図していたが、コロナ禍の影響で2020年度は予定していた研究をほとんど実施できなかった。2021年度は、コロナ禍による制限は受けつつも、数多くの新株発行関連訴訟が提起され、判決が下される東京地方裁判所において重要裁判例15件以上の裁判記録を閲覧したほか、訴訟代理人へのインタビューも実施することができた。これらの調査から、ひとくちに新株発行の効力の否定を求める裁判例といっても様々な紛争類型がありうることが明らかとなり、紛争類型ごとに適用規範や判断視座を調整する必要がありうるのではないかとの示唆を得て、今後はその検証に進む予定である。 また、本研究と関連するテーマを扱った論文等を収集し(たとえば、清水円香「新株発行の秘匿と既存株主の救済」『企業都法を巡る現代的課題』(商事法務、2021)93頁以下)、それらの検討を行った。 なお、以前から新株発行等不存在確認の訴えに関する会社法829条の逐条解釈および新株発行等の無効判決の効力に関する会社法840条・841条・842条の逐条解釈の原稿の執筆を進めていたが、それらを収めたコンメンタールが2020年度末になってようやく刊行された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のため、弁護士事務所を訪問し、インタビューを通じて判決文には現れない裁判の背景事情を聞き出すという作業を当初計画していたほどには行えなかったことによる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度・2021年度に実施できなかった弁護士へのインタビューは2022年度に実施することを予定している。裁判所で裁判記録を閲覧することで多少の代替はできるが、訴訟代理人にインタビューする以外には有用な情報獲得手段がないケースもあるためである。 また、2022年度は研究の最終年度であることから、これまでの調査から得られた示唆をもとに、小規模閉鎖会社における新株発行紛争事例の合理的解決のためのあるべき規範の定立にむけて、研究の総仕上げを行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため弁護士事務所でのインタビューが予定していたほどは実施できず、旅費及び謝金の使用額が少なくなったことによる。2022年度に実施する予定である。
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