令和4年度は、令和2年度・3年度に実施することを希望していたもののコロナ禍により実施を延期していた裁判記録の閲覧1件および本研究において注目すべき事件の訴訟代理人を務めた弁護士へのインタビュー1件を実施した。これら以外にも裁判記録の閲覧やインタビューを企図していたが、資料の整理や分析に用いていたパーソナルコンピュータの1台が不調となり代替コンピュータの購入のために研究費を使用する必要が生じたことから、裁判記録閲覧や専門家へのインタビューのために旅費や謝金を支出することを断念した。そのため、当初予定した事例検証のすべてを実施することはできなかった。 研究期間全体を通じてみても、本研究の研究期間(令和2年4月~令和5年3月)はコロナ禍により各種の社会活動が大きな制約を受けた期間とほぼ完全に重なってしまい、判決文には現れてこない事実関係を裁判記録の閲覧や訴訟代理人へのインタビューから得るという本研究の目玉ともいうべき研究手法を当初の予定通りに実施することができなかった。これは本研究にとっての大きな誤算である。データベースを用いて関連裁判例を広く浅く調査することでその埋め合わせをしようと試みたが、この代替法も十分な成果を得たとは言い難く、結局、実証研究の比重を多少軽くして、その分理論研究に重きを置くという軌道修正を図らざるを得なくなった。個人的には不満の残る結果となったが、本研究期間の前半で提示したいくつかの仮説を実証研究によって確認するという最低限の成果は得られたものと考えている。
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