非公開会社たる小規模閉鎖会社においては、新株発行の手続として求められる株主総会決議を欠くにとどまらず、出資の履行を欠いたり、新株発行の事実が隠蔽されるなど、より大きな瑕疵を伴う新株発行が支配権変動目的で行われることが少なくない。このような新株発行により不利益を受ける株主に、新株発行無効の訴えを超える救済策、すなわち、新株発行不存在の主張を認めるべきかどうかが問題となる。本研究では、出資の履行を欠く新株発行の効力、平成26年会社法改正により導入された出資の履行の「仮装」に関する諸規定の意義と射程距離にかかる検討を踏まえて、新株発行不存在事由の判断枠組みを明らかにした。
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