研究課題/領域番号 |
20K01394
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
名津井 吉裕 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (10340499)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 対世効 / 既判力拡張 / 団体関係訴訟 / 人事訴訟 |
研究実績の概要 |
本年度は、判決効が拡張される類型のうち、対世効型について考察を深めた。対世効型は、第三者に対して判決効を拡張することを定めた法規が存在する場合を典型とする。これには人事訴訟関係、団体関係訴訟に大別されるところ、後者については、会社の組織に関する訴えにかかる請求認容判決の第三者に対する効力を定めた規定(会社834条)が主な例となる。一般に同規定による第三者に対する判決効拡張は対世効と解されるが、対世効そのものは請求認容判決に限定されたものではないことは、人事訴訟に関して同様に対世効を定めた規定(人訴24条1項)が請求棄却判決をも含むことから明らかである。しかし、団体関係訴訟における対世効が請求認容判決についてのみ対世効を生じる片面的なものとされる理由は必ずしも明確ではない。本研究においては、人事訴訟の対世効との対比から、人事訴訟の当事者が主張する身分関係が一身専属的であり、当該身分関係の帰属する当事者自体は限定されながら、当該身分関係に利害関係を有する者は当事者とは異なる身分関係上の地位を有し、かつ、そうした利害関係人が多数に及ぶことから対世効が正当化されることを踏まえ、団体関係訴訟における訴訟当事者と判決効の拡張される第三者の地位と比較検討を試みた。その結果、団体関係訴訟においては、利害関係人として判決効の拡張される第三者は、訴訟当事者のそれと実体的に同等であり、現在の訴訟当事者が実体関係上の理由から訴訟当事者となることに必ずしも必然性はなく、提訴に必要な手続を経る限り、他の利害関係人も原告になることができることを前提としていることに着眼すべきことに明らかにした。以上の考察は、近時有力に主張されている対世効としての既判力拡張を否定する見解の当否、ひいては対世効が既判力拡張を伴うことを前提とする伝統的見解が正当性を主張できる限界を探る試みでもある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き、新型コロナ感染症の拡大による蔓延防止措置、活動制限の影響により、授業はもちろん、学内業務についても特別な対応を迫られ、本研究に割当を予定していたエフォートが損なわれる状況が続いた。昨年度と同様、文献調査による研究活動は細々と継続することができたものの、予定していた成果を上げることはできなかった。海外の研究者との連携については、オンラインで連絡を取ることはできたが、具体的な渡航計画等を立てることができる状況になく、互いの状況を確認するに止まり、昨年度同様、フィールド・ワークを実現させることはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
初年度から継続している新型コロナ感染症の感染拡大にかかる渡航制限は、現在もなお続いている。昨年度と同様、今後も研究活動の中心を文献調査におくことはやむを得ないように思われる。他方、オンライン会議システム等のオンライン・ツールの活用により、渡航しないままできることの幅が広がりを見せている。セキュリティ面に配慮しながらも、新しい技術を積極的に取り入れることにより、この間の遅れを巻き返すことができるように努める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額が308円と少額であり、必要性がありかつ購入することのできる適切な物品がなかったため。
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