本年度は、我が国における、遺贈・死因贈与・遺言信託・遺言代用信託など、行為者の死亡を原因とする財産の処分(死因処分)の目的・対象とされた財産そのものと、そのような死因処分の目的財産に由来する利益に対して、相続債権者は、どのような権利を有し、それは、どのような規律のもとで、保護され(されない)のかについて、問題の現状と立法的課題とを明らかにすることを目指して、研究を行った。 まず、アメリカにおける相続財産清算手続き(probate:検認手続)の現状と問題点、夫婦共有財産制を採用するカリフォルニア州およびフランスにおける、配偶者の一方の死亡時における夫婦共有財産の清算手続きの現状と問題点、ドイツにおける相続財産破産手続き、および、遺産管理手続きの現状と問題点とについて、調査し、研究を行った。 次に、我が国における、相続財産破産制度、財産分離、限定承認について、制度の利用状況の調査と、理論的な問題点についての検討を行った。 研究期間全体を通しての研究から、死因処分の行為者の目的財産等に対するコントロール(所有権、撤回権・変更権の留保の有無など)の大小と、行為者の債権者による、介入的な権利行使の可否とが連動していることが明らかとなった。また、一方で、厳密公平な遺産の配分への要請があり、他方で、包括的な遺産の清算にかかるコストの問題とがあり、両者はトレードオフの関係にあることを踏まえて、制度設計が望まれるとの示唆を得ることができた。
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