研究課題
情報化社会の進展により、(a)取引内容と(b)取引方法が今日、それぞれ情報化されているとの現状分析に基づき、本年度は、昨年度に続いて、後者(b)取引方法の情報化の問題として、いわゆるプラットフォーム提供者の責任について検討を加えた。詳細に文献調査を進めた結果、第1に、プラットフォーム提供者の責任には、(b-1)プラットフォーム利用者に対する責任と、(b-2)安心で安全なオンライン上の取引環境を整備する責任の2つがあると考えられること、第2に、前者(b-1)は利用者に被害が生じていることを前提に主に私法上の問題とされるのに対し、後者(b-2)は利用者に被害が生じているか否か無関係に、主に公法上の問題とされること、第3に、前者(b-1)プラットフォーム利用者に対するプラットフォーム提供者の私法上の責任には、(b-1-ア)契約利益の責任もあれば、(b-1-イ)物的被害や人身被害のような完全性利益の責任もあること、第4に、後者(b-2)プラットフォーム提供者の公法上の責任も、プラットフォーム利用者に損害が発生した場合には私法上の責任も生じると考えることは許されること、第5に、プラットフォーム提供者の責任を検討する際、これらの多元的な責任の内容と性質の違いを意識する必要があること、以上5点を確認した。そのうえで、近時、我が国で注目されているヨーロッパ法律協会ELIが策定したオンラインプラットフォーム取引のモデル準則が、このプラットフォーム提供者の多元的な責任において、どのような責任まで射程を持つべきものか、その他の法制や判例との比較を通じて考察するとともに、プラットフォーム提供者の責任に関するあるべき規律を今後定立することの可能性を探った。
2: おおむね順調に進展している
本研究が主要な研究手段とする文献研究自体は予定通り進んでおり、その成果の一部を論文で公表し、研究会でも報告して意見交換する機会を得た。
文献調査をさらに進め、関連資料の収集と分析により、当初の計画通り、研究の最終成果の公表に向けて、課題についていっそう考察を進める予定である。
コロナ渦の影響により、予定していた海外出張を見送ったため、次年度使用額が生じた。翌年度、状況を見てその実施費用として使用する予定である。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (5件) 図書 (1件)
都筑満雄ほか編『民法・消費者法理論の展開 : 後藤巻則先生古稀祝賀論文集』(弘文堂)
巻: . ページ: 253-282
山野目章夫ほか編『マンション判例百選 』(有斐閣)
巻: 別冊ジュリスト259号 ページ: 152-153
松本恒雄ほか編『判例プラクティス民法 I 総則・物権〔第2版〕』(信山社)
巻: . ページ: 143-145
私法(有斐閣)
巻: 83 ページ: 3-55
千葉恵美子ほか編『Law Practice民法 II 債権編 〔第5版〕 』(商事法務)
巻: . ページ: 21-26