本研究は、情報化社会において取引の情報化に伴って重要になったプラットフォーム提供者の責任について検討を加えるものである。本年度も、出張調査を断念し、文献調査を中心に研究を進め、この問題で議論が先行するEUの法制、特に「デジタルサービス法(DSA)」について詳細に調査した。 その結果、(1)従来、プラットフォーム提供者は、情報を仲介するのみで情報の拡散に消極的な役割しか果たしないことを理由に責任を限定する免責の規律に服していたが、今やその影響力の大きさに鑑み、もはや単なる仲介者とは言えず、情報の拡散に積極的な役割を果たしていることを理由に責任を広範に課す帰責の規律に服するに転換したこと、(2)こうしたプラットフォーム提供者の広範な責任を基礎づけるために、プラットフォーム提供者にはプラットフォームの運営の適正化を図る各種の義務がその規模に応じて段階的に課されること、(3)プラットフォーム提供者に課されるそのような義務の多くは、情報の内容の適切さを確保しようとする内容規制というより、開示や環境整備をはじめ、情報の利用の適切さを確保しようとする手続規制と位置づけられるべきものであること、(4)プラットフォーム提供者が負うとされたそれらの義務はDSAが公法上の規制であるため、私法上の義務としても観念できるかは今後の議論になお委ねられていることが、それぞれ確認された。 (1)~(3)については、本年度、本研究により詳細を明らかにすることができた反面、(4)については、公法上の規制と私法上の規制の役割や機能の違いを踏まえながら、両者をどのように関係づけて望ましいプラットフォーム規制を実現するか、さらに考察を深める必要があるとの認識に至った。
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