本年度は、昨年度に引き続き、parentalite概念(最後のeには、アクサンテギュが付く。)の理解の精緻化に向けて、同概念が具体的な法的権利義務に及ぼす影響を検討した。parentalite概念は、子に対するその日常的な役割を果たすことが困難な状況にある親を支援するという、いわば「子育て支援」という文脈で、さまざまな社会法の立法につながったという経緯をもつ。他方で、親が果たすべき役割を強調することは、親権(という職能)との関係では、その職能を果たせない親に代わって第三者がその地位に就く余地を生み出す概念ともなった。また、このような親権の職能の強調は、「親責任契約」の立法例にみられるように、親権の標準化を志向することにもつながり、批判を受けた。 社会法に由来をもつparentalite概念が、より明確な形で民法上の親権の概念に影響を与えたのは、2002年3月4日の法律第305号において、coparentaliteが指導原理とされたことにあった。この概念が民法上の「親権の共同行使」とは区別する形で用いられることは、親権の目的である「子の利益」を前提とした父母間の平等よりも、男女間の平等を前面に出すものであるとの指摘がある。 parentalite概念は、民法上の親権と異なり、事実的関係に着目するという特徴も有する。本研究が対象とした非婚の複合家族は、民法上の婚姻に規律されない、事実に基礎づけられる関係ということができる。こうした事実上の関係を検討するに当たっては、上述のような、parentalite概念により既知の法的概念にもたらされる影響を考慮することが肝要である。本研究はその一端を明らかにした点に意義がある。
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