研究課題/領域番号 |
20K01410
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
宮崎 裕介 日本大学, 法学部, 准教授 (20585096)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 上場会社 / 子会社による親会社株式の取得 / 組織再編行為 / 締め出し / 株式買取請求権 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、①上場会社による自己株式取得、および②株式買取請求権について、日本の判例・裁判例あるいは実務の動向を整理していくつかの論稿を発表した。 ①では、三井鉱山事件(最判平成5年9月9日民集47巻7号4814頁)についての判例解説を執筆する機会を得たので上場会社による自己株式取得についての法的問題点についてリサーチし、現行の会社法下で生じうる問題点等を検討した。三井鉱山事件そのものは、100%子会社による親会社株式の取得がなされた場合の親会社取締役の責任の有無・程度が問われた事案であったが、子会社による親会社株式の取得が禁じられている現在においても同事件の最高裁が示した理解はなお示唆に富んでいる。 ②では、組織再編行為や締め出しに際しての株式買取請求権等の機能を分析し論文を発表した。株式買取請求権等は、周知の通り組織再編行為等について反対株主がその保有株式を当該株式会社に買い取ってもらう制度であり、その意味で自己株式取得のようなペイアウトではない。上記の論文では、株式買取請求権等の当事会社や買収者に対する規律付け機能を会社法の条文の解釈に関連付けられるかを中心に論じたが、株式買取請求権等が行使されることにより社外に現金が流出するという側面は自己株式取得と必ずしも無関係ではない。 以上のほか、当該年度は、インサイダー取引と当該会社の取締役の責任について、米国の判例・裁判例を分析する作業も行った。自己株式取得規制を考える上でインサイダー取引規制との関連は無視できないが、上記論文ではその基礎的検討としてインサイダー取引に係る発行会社取締役の信認義務について米国の知見をまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は、「研究実績の概要」において述べた内容についての研究に注力し、いくつかの論稿等を発表することができた。特に、上場会社による自己株式取得について、わが国の会社法におけるあるべき法規制ないし解釈のあり方について検討することができた。その他、本年度にリサーチした項目については、令和4年度以降、順次公表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で積み上げた知見はもちろんのこと、本研究の主たるテーマである「上場会社によるペイアウトとしての自 己株式取得」について、その現状を把握するとともに法定規制のあり方を探求する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大が収まらなかったため予定していた出張の大半を実施することができなかった。令和4年度は順次出張が可能になると思われる。
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