研究課題/領域番号 |
20K01410
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
宮崎 裕介 日本大学, 法学部, 教授 (20585096)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 少数株主 / 締出し / 株式併合 / 特別支配株主による株式等売渡請求 / インサイダー取引 |
研究実績の概要 |
本年度は、最終年度のアウトプット作業に向けて①上場会社の自己株式取得を巡る諸問題および②それに関わるインサイダー取引規制の問題などについて、文献などを収集し分析する作業に注力した。 ①の研究過程の副産物として発見した問題点として、少数株主の保護をどう捉えるかという問題が挙げられる。自己株式取得は言うまでもなく、会社財産を株主に返還する行為であるが、それは経済的実態に着目すると、経営者・支配株主に締出し(キャッシュ・アウト)される場合と無関係ではない。本年度は、株式併合により少数株主が締め出された事例、および特別支配株主による株式等売渡請求がなされた閉鎖会社の事案について判例評釈を公表する機会を得た。株式会社をめぐるキャッシュ・フローに関連して、株主に金銭が返還される場面における法的問題点および法規制のあり方について深く考える機会を得た。 ②においては、従来、不公正取引が起こりうるという弊害が指摘されてきた自己株式取得について、正面からインサイダー取引に係る問題点をアメリカ法を素材に研究を行い、会社・株主の損害、および保護のあり方を探求した。この成果は、最終年度のアウトプットの対象とする予定である。 また、令和4年度に出された判例・裁判例を纏めて分析して公表するという機会を得ることができた。1年間に出された裁判例・判例を網羅的に検討することができたので、これまでの研究で遺漏のあった事例等についても多く気付くことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度については、特に①については2本の判例評釈をジュリスト誌などに掲載することができ、研究成果としてある程度形のあるものを残せたと自負している。②については、最終準備段階に入っているので、なるべく早く公表をしたい。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた、「上場会社によるペイアウトとしての自己株式取得」というテーマについていくつかの法的問題・課題を発見することができた。これらについての研究を深めていきたい。中でも、近時は、日本の企業において大規模な自己株式取得(自社株買い)が多くみられるようになってきた。これらは、各上場会社のPBRを高める効果があり、わが国の上場会社への投資の引き込み(株価の上昇)をもたらしている。このような経済的な背景にも目を配りつつ研究を進める。その際、現状の自己株式取得規制が、過小ないし過大規制となっていないかの検証も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大が相変わらず収まらなかったため予定していた出張の大半を実施することができなかった。令和5年度は順次出張が可能になると思われる。
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