研究課題/領域番号 |
20K01411
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
本間 美奈子 久留米大学, 法学部, 教授 (00282195)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 上場会社 / 取締役 / 女性登用 / イギリス / コーポレートガバナンス・コード / 管理職 |
研究実績の概要 |
本年度は、①まず十分な文献調査、具体的には、第1に、イギリスのデーヴィス報告書(2011年)でなされたFTSE100企業の取締役会に占める女性の割合を25%以上に増やす等、FTSE100・FTSE250企業を対象とする勧告(1~10)の実施状況についての毎年度のレビュー報告書を、第2に、取締役への女性登用についての調査・研究を長年実施しているクランフィールド大学の毎年度の報告書を、第3に、2006年会社法への開示規制の導入(取締役会に占める女性の割合のみならず、管理職そして従業員に占める女性の割合についても開示)の動向と関連する報告書を、第4に、コーポレートガバナンス・コードの改訂(年次報告書の一節で取締役の選任に関連し、指名委員会の選任プロセスを含めた活動について記載する等)についての財務報告評議会(FRC)の動向と関連する報告書について、それぞれ詳細に検討した上で、②イギリスでの現地調査(インタビュー調査と資料収集)を実施し、事前の文献調査により明らかになった問題点・疑問点等についてのインタビューや実務家・研究者との意見交換、現地でないと入手困難と思われる資料の収集等を行う予定であった。国内の大学・研究機関においても同様の現地調査を行う予定であった。
①の文献調査については、2011年~2015年に公表された関連する組織の報告書や財務報告評議会(FRC)の報告書を含め、かなり広範かつ横断的に読み込むことができた。その成果の1つとして、2020年12月に「女性取締役の存在意義と今後の展望-イギリスの取組みを参考に」(ビジネス法務21巻2号)という論稿を公表した。
しかしながら、②のイギリスでの現地調査と国内での現地調査については、新型コロナウイルス感染状況の拡大により、実施できなかったため、次年度以降に行いたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
その理由としては、新型コロナウイルス感染状況の拡大を受けて、本年度予定していたイギリスでの現地調査(インタビュー調査と資料収集)と国内での現地調査を実施することができなかったため、文献調査により明らかになった問題点や疑問点、および、実務上の運用等についての確認・意見交換ができなかったこと等があげられる。
また、刻々と変化する感染状況に対応するため、本務校での授業形態も昨年度までとは異なるものとなり、その時ごとの対応・準備に相当の時間が必要とされたのみならず、学生対応・学生支援にも相当の時間が必要となった。このことはやむを得ないことであったし、しばらく継続するものと考えており、今後はその時々の状況に柔軟に対応しつつ、コロナ対応と自身の研究の両立に取り組んでいく所存である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度実施できなかったイギリスでの現地調査(インタビュー調査と資料収集)と国内調査については、次年度に行うこととする。
それまでの間、2011年~2015年に公表されている報告書等の検討を深化させるとともに、2016年にハンプトン=アレクサンダー・レビューが公表され、取締役の女性割合をさらに増やすための取組み、女性の上級管理職を増やすための取組みについての提言・勧告が行われているので、その勧告についての実施状況を検討している毎年度のレビュー報告書(2017年~2021年)等、関連する報告書を読み込んでいく予定である。このハンプトン=アレクサンダー・レビュー(2016年)については、近く本務校の紀要に公表する予定であり、2011年~2015年の状況(取締役に占める女性の割合を増やす取組み)と2016年~2021年の状況(取締役に占める女性割合をさらに増やすとともに、上級管理職に占める女性の割合を増やす取組み)については、それぞれ論稿を執筆する準備を進めているところである。
ノルウェーの取組みについても、ノルウェーの会社法、特に機関構成について正確に理解した上で、クオータ制が導入された経緯等についての文献調査を進め、現地調査も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、科研費の使用としては、イギリスでの現地調査(インタビュー調査と資料収集)と国内における現地調査に相応の予算を見込んでいたが、新型コロナウイルス感染状況の拡大により、これらの現地調査の予定をすべてキャンセルせざるを得ない状況となったことが、その理由としてあげられる。
次年度には、感染状況を見極めつつ、可能な時期に、本年度実施できなかった分の現地調査(イギリスと国内の大学・研究機関)を行う予定である。
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