デザインの重要性が叫ばれる中、デザインを主な規律対象とする意匠法は、近時の改正を経て、その保護を強化しつつある。一方で、そのような動きに対応して、多様な行為が意匠権侵害の懸念を内在するようになり、それを意匠権侵害とするべきか、またその救済が差止請求等の強力な権利によるべきかといった点が検討されなければならない。本研究は、我が国の意匠法を対象に、我が国の他の知的財産法や、あるいは諸外国の意匠制度との対比において、第三者の自由を確保するための措置をどのように形作っていくべきかを検討するものである。 今年度は、延長後の最終年度となるものであることから、ここまでの研究のとりまとめを行った。特に昨年度における検討にあったように、仮想空間をターゲットとした研究を中心に、意匠法における権利範囲と、それに関する制約の必要性について検討を行った。 具体的には、仮想空間における保護の拡張にあたっては、現状よりも更に権利制限の重要性が増すと考えられることから、すでに仮想空間に関する権利を取り扱っている著作権法、また今後その保護を拡張する不正競争防止法上のデッドコピー規制との比較を行った。加えて、画像の意匠に関する研究を拡張し、どのような意匠を登録すべきかという、登録対象によって保護範囲を限定するのではなく、どのような利用行為であればそれを認めてよいかという、むしろ利用行為の性質によって侵害の成否を違える方向性について、検討を進めた。
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