研究課題/領域番号 |
20K01424
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研究機関 | 昭和女子大学 |
研究代表者 |
森本 直子 昭和女子大学, 全学共通教育センター, 准教授 (40350425)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 言語マイノリティ |
研究実績の概要 |
医療の中でもとりわけ文化的・宗教的背景の影響が大きい生殖医療分野において、近年価値の対立と分断が著しく、世界的に注目を集めている米国の人工妊娠中絶に関する最高裁判例の動向について検討した。 中絶を提供する医師や医療施設を拘束するTRAP法と呼ばれる中絶規制類型のルイジアナ州法を5対4で違憲とした2020年6月29日の判決は、4年前にほぼ同一文言のテキサス州法が違憲とされていたことから単なる焼き直しの印象を免れない。しかし、両判決の間で生じた最高裁の裁判官構成の保守化を考慮すれば、前者が中絶の権利を確立したRoe判決見直しをいかにぎりぎりのところで回避・先送りしたかがわかる。判決後の裁判官交代によりさらに保守化が進んだ最高裁でまもなく見込まれているRoe判決の見直しは、一般には女性の権利にとって問題とされる。しかし、その実質的な影響は、女性の中でも中絶が合法である州に移動するための経済的・時間的リソースを欠く恵まれない層に集中することは間違いない。正確な情報へのアクセスが困難な言語マイノリティもまた、この層に包摂されるであろう。 在留外国人ないし言語マイノリティ支援の団体・拠点であるMICかながわ、アルぺ難民センターにおいて、長年にわたって在留外国人の支援活動に携わってこられた実務家二名からオンライン研究会でお話を伺う機会があり、医療支援に関してこれまでの歩みと実情、今後の課題について、実務的視点からの知見が得られた。 引き続きコロナ禍の影響を受けて、2021年度も現地調査は国内外共見送らざるを得なかった。本研究は医療機関を調査対象とするため、医療現場への負担を回避する観点からこのことはやむを得ない。他方で、コロナ対応も二年目となり、オンライン研究会で多忙な遠方の実務家から移動なしで直接お話を伺えたことは、研究の内容・方法の両面においてメリットは大きく、今後の参考になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍に伴い、渡航を伴う海外調査及び国内の医療機関を対象とする調査が実施できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
内外の感染状況と渡航制限を注視しながら、海外調査・国内調査の実施時期と方法を検討しつつ、当面は文献研究を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による海外渡航及び国内移動の制限・自粛により、海外・国内出張が実施できなかったため。特に、本研究は医療機関を調査対象とするため、医療現場に負担をかける訪問調査は差し控えざるをえなかった。今後は内外の感染状況を見ながら、支障のない範囲で出張計画を立てて、調査を実施したい。
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