研究課題/領域番号 |
20K01436
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
馬場 圭太 関西大学, 法学部, 教授 (20287931)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | デジタル・コンテンツ / デジタル・サービス / 契約適合性 / 個人データ / EU指令 / 消費者契約 |
研究実績の概要 |
2020年度は、移動の自由が制限されたことにより海外研究者と共同で行う活動等について予定を変更せざるを得ない状況に陥った。その反面、オンラインでの研究活動や文献の調査分析に時間をかけることが可能となった。その結果、全体としては、研究を順調に進めることができたと考えている。具体的には、次の活動を行った。 (1) 2020年度の比較法学会で予定していた研究報告は2021年に繰り延べられたが、同報告の基礎となる論考を専門誌に公表することができた(馬場圭太「デジタル・コンテンツ=デジタル・サービス供給契約における不供給または適合性の欠如に対する救済手段」L&T89号)。 (2) 2020年11月に消費者庁消費者行政新未来創造オフィス客員主任研究官、2021年4月には消費者庁 新未来創造戦略本部国際消費者政策研究センター客員主任研究官に就任し、複数の研究者および行政官とともにデジタル・コンテンツ=デジタル・サービス供給契約にかかる法制度の研究分析を行っている。あわせて、研究成果を社会に還元する観点から、2020年12月に消費者庁において職員を対象としてEU消費者法およびフランス消費者法に関する講演を実施し、意見交換を行った。 (3) 同志社大学デジタル法制研究センター(代表:川和功子・同志社大学教授)の立ち上げに加わり、デジタル取引について共同研究を行っている。 (4)その他、海外研究者との共同研究の成果として、フランスの出版社から編著書(Keita BABA et al., Droit civil japonais : Quelle(s) reforme(s) a la lumiere du droit francais ?, LGDJ)が刊行された。また、定型約款に関する論考(馬場圭太「定型約款に関する新規定とその解釈」ノモス47号)が公表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、移動の自由が制限されたため、海外研究者との共同研究活動、海外調査、学会報告などを予定どおりに実施することができなかった。これらの点については進捗がやや遅れたが、一方でオンラインでの研究活動や文献の調査分析に注力する時間を確保することが可能となり、関連領域の研究者と月1回以上のペースで研究会を実施するなど、国内での共同研究を活発に進めることができている。結果として、研究代表者の個人研究を促進する効果がもたらされ、研究実施の概要でも示したような研究成果の公表に結びついた。 以上の点を総合的に判断すれば、研究活動はおおむね順調に推移しており、部分的には当初の計画以上に進展していると評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、順次進むことが予定されているヨーロッパ諸国におけるデジタル・コンテンツ=デジタル・サービス供給契約指令の国内法化の状況を把握分析し、①EU指令に定める制度が加盟国においてどのような形で定着しているか、②指令と国内法の間にどのようなコンフリクトが生じているか、そして③ヨーロッパの動向から日本のデジタル法制を構想するためのヒントを得ることができないか検討する。これに加えて、④消費者契約における個人データの取扱い、とりわけ個人データを有償の給付として捉えるという考え方の妥当性と、日本法への応用可能性について研究を進める。 今年度は、2020年度に実施する予定であったが延期せざるを得なかった、海外研究者を日本に招聘して行うセミナーや海外での調査インタビューの実施も計画している。ただし、今年度も外国への移動が制限される可能性が小さくない。移動が不可能となった場合の次善策として、オンラインによる実施も視野に入れている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は国内外の移動の自由が制限されたため、外国旅費および国内旅費を一切使用することができなくなった。一方で、オンラインでの学会、研究集会、会議・打合せを行う必要が生じたため、これに対応するための備品を購入した。それでも、前者の額が後者の額を大きく上回ったために、未使用額が生じることとなった。 2020年度に実施することができなかった海外調査等の移動を伴う活動は、2022年度に延期して実施し、2020年度の未使用額を割り当てることとする。
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