最終年度である今年度は本研究の仕上げにあたる作業を行った。 第1に、消費者庁との共同研究の成果である消費者庁リサーチ・ディスカッションペーパーの一部として「フランスにおけるデジタル・コンテンツ指令の国内法化 - 国内法化オルドナンスの概要」を公表する機会を得た。また、「物品売買契約、デジタル・コンテンツ及びデジタルサービス供給契約における契約適合性 - 物品、デジタル・コンテンツ及びデジタルサービスのための法定適合性保証に関する2021年9月29日のオルドナンス第1247号」日仏法学誌上で公表した。これら2本の論考により、デジタル・コンテンツ指令のフランスにおける国内法化の状況を紹介し、その結果、完全平準化アプローチが採用された指令であるにもかかわらず、加盟国において独自の選択が行われ、実際に適用される法に違いが生じていることを確認することができた。また、「消費者契約における『反対給付としての個人データ』 - EU消費者私法の新機軸」が論文集に再録された。 第2に、デジタル・コンテンツ供給契約を新種の契約類型として捉えるとき、これを契約類型の階層構造の中でどこに・どのように位置づけることができるかについて検討を加えた成果の一部を、拙稿「民事契約・商事契約・消費者契約の位置づけに関する覚書 - フランス法における契約の特種化論を参考にして」として公表することができた。 第3に、国際共同研究にも注力した。2023年10月に蘇州大学で開催された国際シンポジウムに参加して日本法における民事および商事の留置権に関する報告を行ったほか、2024年3月にはパリ第1大学招聘教授として日本の不法行為法に関する講義と研究会報告を行い、当地の研究者および学生と意見交換をすることができた。
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