研究課題/領域番号 |
20K01439
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
村山 淳子 西南学院大学, 法学部, 教授 (90350420)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 医療情報 / 死後の人格権 / 医師の守秘義務 / 個人情報保護 / ドイツ法 |
研究実績の概要 |
1.本研究は、患者の死後の医療情報の取り扱いに関して、死亡した患者の固有の法益を確立するとともに、対抗関係に立つ遺族・第三者・国家・社会の利益との調整問題を解決することを目的とする。そのための主要な方法として、わが国と類似した医療法制をもちながら、死後の人格権をみとめ、患者の死亡後にまで及ぶ医師の守秘義務を厳格に貫く伝統がある、ドイツ法からわが国への有意な示唆を獲得しようとするものである。 2.本年度は、昨年度の研究作業をさらに進めて、とくに緊急事態における法の枠組や解釈の動きに着目し、ドイツの既存の法制度全般を調査したうえで、コロナ禍による緊急事態下で、何がどのように、いかなる手続で変わったのか、あるいは変わらなかったのかをあきらかにする作業を行った。そこからとくに、連邦行政府への権力の集中、それでも変わらぬ基本権保護の法理やその手法を抽出することができた。この成果の一部については、来年度以降、学会にて発表することを予定している。この成果は、死後の人格権と(とくに公法上の)対抗利益との調整問題を考察するうえで重要な示唆を含むものである。 3.そして、わが国では議論の希薄な自己決定権について、ドイツの議論を調査研究し、その類型化を試みる研究作業に着手した(この成果については、来年度以降、記念論文集にて公表予定である)。これは、死後の人格権の法的根拠を究明する作業において重要な意義をもつものと位置付けている。 4.来年度は、本課題の成果をまとめることを視野に入れ、これまでの研究成果を本テーマのもとに集約する段階に入りたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
直接のテーマへの接近はやや遅れているものの、その代わりに、日独の法制に対する構造的理解や、人格権の一般的解釈についての理解を深めることができた。これは、最終的な研究成果の質の向上につながると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ドイツ法の全体構造や人格権法に視野を広げた本年度の研究成果を集約し、公法分野も含む広い視座に立って、死後の人格権をめぐる従来の判例や解釈論を批判的に再検討してゆきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会・研究会のいずれもオンライン開催であったため、旅費が全くかからなかったことが最も大きな理由である。さらに、本年度は、コロナ禍をテーマとする資料を多く収集したため、書籍ではなく、インターネット経由での無料で収集できたことも影響している。来年度は、本年度取り組み、来年度以降学会発表を予定しているコロナ禍の法制度や解釈論に関する国内外の書籍が多く出版されることが予測されるため、その購入にあてたい。
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