研究課題/領域番号 |
20K01444
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伏見 岳人 東北大学, 法学研究科, 教授 (20610661)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日本政治外交史 / 東北開発 / 後藤新平 |
研究実績の概要 |
当初の研究計画では、一年目にあたる2020年度は各種の資料調査を実施して、次年度以降の研究遂行に向けた基礎的な作業に多くの時間を費やす予定であった。しかし、新型ウイルス感染症の拡大とそれに伴う様々な対応に当たったため、当初の計画は大幅な修正を余儀なくされた。東京圏の資料館等に所蔵されている一次資料の調査旅行はたえず制約を受け、当初に予定していた東北地方に所蔵されている原資料の大規模な調査整理作業についても、対面での実施が困難となり、次年度以降に延期となった。 それでも、当該年度には、明治後期・大正前期の東北地方の開発に深く関与した政治家の後藤新平に関する研究に取り組んだ。公衆衛生の専門家である後藤が、明治期における天然痘の流行に際していかに対応し、伝染病予防法の制定にいかに取り組んだのか、そして、大正期に大流行したスペイン風邪に対してほとんど分析や感想を残さなかったのはなぜか、といった点について、これまで未解読の一次資料に基づいた考察を行った。また、後藤と同じく岩手県の水沢出身の政治家である斎藤実との交友関係について、後藤新平記念館と斎藤實記念館に所蔵されている書簡に基づいた分析を施し、戦前の仙台藩出身者のネットワークの実態分析を通じて、東北開発論の背景となる文脈を明らかにする研究成果を報告した。 その他、昭和30年の愛知用水公団法や昭和32年の東北開発三法の制定過程に関して、さまざまな資料を収集調査し、それらの政治過程を考察する基礎的な作業にも取り組んだ。 さらに、本研究の枠組みをさらに発展させるべく、2011年の東日本大震災の発生から10年間における復興施策についての研究に着手し、それを東北開発論の文脈に位置付ける基礎的考察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、東京圏にある各種の一次資料の訪問調査は大幅な制約を受けることになった。一部はデジタルアーカイブ等で対応することが可能だが、本格的にはやはり大規模な訪問調査を行うことが望ましく、この点で本研究計画は残念ながら遅れを生じさせている。 また、宮城県外に所蔵されている政治家の原資料を整理・調査する計画を立てていたものの、これも同じく感染症対策という観点から対面での大規模な調査活動が難しくなり、まだ再開の見通しは立っていない。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度についても新型コロナウイルス感染症による調査活動の制約は続く見通しである。したがって、当初の研究計画については、修正を余儀なくされる点も大きい。それでも、2020年度からの基礎的作業を踏まえ、2021年度には、学会報告や学術論文といった形で、まとまった研究成果を複数公表する予定である。それらの活動を通じて、最終年度の三年目の方向性を実現可能なように軌道修正させていくことが望まれる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行により、県外での資料調査が困難となったため。流行の収束を見すえて、訪問調査活動の再開に取り組んでいく。
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