当初の計画を延長して4年目の最終年度となった今年度は、過去3年間に予定しておきながらコロナ問題等の影響により実施できていなかった地方での資料調査を実施するとともに、これまでの研究成果を取りまとめる作業に注力した。 具体的には、京都や盛岡に所蔵されている政治家の未公開資料を調査するとともに、国会図書館に所蔵されている椎名悦三郎関係文書などを幅広く調査することで、明治期から戦後にかけての東北開発政策について新たな知見を得ることができた。また、明治期から昭和初期にかけて、日本の都市政策や地方政策に深く関わった政治家である後藤新平について、全国に所蔵されている新たな資料を発掘し、その政治指導の特質について再検討することができた。 これらの調査や分析によって、明治期から昭和末期までの時期までを通底する国家的な東北開発政策の展開について、長期的な考察を行える視座を得ることができた。とくに、昭和前期の世界恐慌や東北凶作を踏まえて行われた東北振興政策と、1950年代に東北開発三法の制定に代表される東北開発政策の二つの時期について、これまで先行研究が数多く積み重ねられてきたものの、その合間の占領期に前後する時期や、高度成長期以後の東北論については、資料的制約もあって、必ずしも研究がされてこなかった状況が明らかになってきた。それらの時期を分析するための政治家や官僚の一次資料が圧倒的に不足していることが、これらの政治史研究の欠落の背景となっている。 しかし、四年間の研究活動を通じて、それらを埋め合わせる資料を収集・整理することがかない、これまでは断片的に行われきた東北開発政策の展開について、体系的・包括的な分析を行う見通しを立てることができた。これが、本研究課題を通じて得られた最大の研究成果となる。
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