研究課題/領域番号 |
20K01448
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
福井 秀樹 愛媛大学, 法文学部, 教授 (00304642)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 非実験的推定手法 / マッチング / 政策効果推定 / EBPM |
研究実績の概要 |
2020年度は、諸般の事情により、当初2022-2023年度に実施を予定していた観察データによる因果効果分析を行った。具体的には、複数空港地域内の特定空港の利用を制限するペリメーター規則がMAR内空港を利用する航空会社の輸送パフォーマンスに与えた影響を、米国のデータにより推定した。今回の推定では、傾向スコア・マッチングおよび重み付けと、差分の差分推定の手法を用いた。 推定結果からは、(1)ダラスMARのペリメーター規則撤廃が旅客増加と運賃競争を促しつつ出発遅延を悪化させたのに対し、(2)ワシントンDC MARのペリメーター規則維持は旅客シフト・増加を犠牲にしつつ運賃競争の維持と出発遅延のコントロールという点ではダラスMARと同等もしくはそれ以上の成果をあげてきた、という示唆が得られた。本研究の分析結果は、ペリメーター規則がMAR内の遅延抑制を促しつつ、運賃競争も一定程度維持し得る可能性を示唆している。 非実験的推定手法を用いた政策効果推定の有効性検証という点では、上記の分析からは以下の興味深い結果が得られた。すなわち、共変量のバランスが図られていないオリジナル・サンプルでの推定結果と、傾向スコア・マッチングおよび重み付けにより共変量のバランスを図った補正サンプルでの推定結果は、係数の符号、サイズ、統計的有意性においてあまり大きな変化がなかった、という結果である。この結果は、Angrist and Pischke (2008)が表明している傾向スコア分析手法の意義に対する留保を支持するものであり、興味深い。 Angrist, J. D., & Pischke, J. S. (2008). Mostly harmless econometrics: An empiricist's companion. Princeton university press.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究が比較的順調に進展し、学会報告および論文公表を実施できているため。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は引き続き観察データによる因果効果分析を行う。複数空港地域内の特定空港の利用を制限するペリメーター規則がMAR内空港を利用する航空会社の輸送パフォーマンスに与えた影響を、日本のデータも用いて推定する予定である。 また、空港発着枠規制が航空運賃・サービス競争に与える因果効果推定を行う。空港発着枠規制は、混雑緩和のために不可欠だが、同時に参入規制としての機能も果たすため、航空運賃・サービス競争を妨げる。事実、混雑空港においては、運賃が高止まりする傾向にあると指摘されてきた。また、既存の航空会社が競争を抑制するため意図的に保有発着枠の利用率の抑制や使用機材の小型化をおこない、結果としてサービス低下が生じているとの指摘もなされてきた。そこで、運賃および運航に関するパネル・データを用いて、空港発着枠規制が航空会社の戦略的行動に与える効果を推定する。具体的には、米国、日本、EUで近年、発着枠規制が導入された空港(例、米国のニューアーク空港、日本の福岡空港)を処置群、そうでない空港を対照群とする。 その際、傾向スコア・マッチング以外のマッチング手法の有効性も検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症の影響により、出張を行えず、予定通り執行できなかった。今後も当初予定している通りの出張が可能になる目途が立たないため、その分をデータ購入、統計分析ソフトウェアのアップデート等にあてて執行する予定である。
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