研究課題
2020年度は新型コロナの世界的流行により、研究代表者・分担者の研究活動に影響が出た。また、本研究の焦点となる中国の対外政策・科学技術政策そのものも重大な転機を迎えた。2020年度には、米トランプ大統領の中国のハイテク産業攻撃に象徴されるように、米中関係が急速に緊張の度合いを高めた。米国が中国の北極進出を問題視して北欧諸国等に警戒を呼びかけたこと、またパンデミックによって世界の人的往来が途絶え中国経済も内向きになったことにより、この1年、北極圏に対する中国の直接的な取り組みは低調であった。ただし他方で、中国では米国の攻撃で自国の経済安全保障が危機にさらされているという認識が高まり、習近平政権は国家の存亡をかけて科学技術開発に全力で乗り出すこととなった。2021年度から本格起動する2035年遠景目標においては、宇宙・深地深海・極地・サイバーなどの新規領域開拓とイノベーションの推進が特に重視されており、中国が新たな技術体系を踏まえて国際秩序の再建を試みる可能性が浮上している。こうした中で、本研究は初年度となる2020年度において、(1)一般的な北極圏研究に関する知見を広げるとともに、(2)中国の科学技術政策・北極圏政策に関する資料整理に着手し、(3)中国の国家発展政策における科学技術政策の動向分析を実施した。また(3)について、中国の北極圏進出を支える技術基盤は宇宙・海洋関連技術との関連が深いため、北斗衛星技術、またそれを漁業応用させたVMS体系などについて分析を行い、習近平政権が海域でどのように軍民融合戦略を準備・実施しているかを検討していった。ただし、パンデミックにより本来想定していた海外調査が全く実施できなかったため、上記の調査も基本的には文字資料分析に依拠していくこととなった。
3: やや遅れている
パンデミックにより海外調査ができなくなっている。加えて、中国がいわゆる「戦狼外交」を実施したこと、また海警法をスピード施行したことなどにより、国内外で中国への関心が高まり、日本国内では安全保障政策の見直しが真剣に議論されるようになった。こうした情勢の変化により、海洋政策を専門とする研究代表者にも政策アウトプットの産出が強く求められる事態となった。そのため、本研究の遂行にもやや影響が出ている。
初年度には中国の北極圏政策、科学技術政策の発展史をレビューすることにしていた。この作業には着手はしたが、まだ歴史的な全体経緯がまとめられていない。当面は論文データベースを用いながらそのサーベイと分析を継続する。またその過程で、中国人研究者の唱える「中国としてあるべき北極圏政策」がどのように変化してきたかを分析する。オンライン会議が世界的にかなり浸透してきたため、2021年度は北欧・ロシア・米国・カナダなどの研究者に対して、中国の北極圏進出に関する聞き取り調査を実施し、可能であればセミナーの開催につなげる。(なお中国の研究者に対しては、昨今、中国で対日警戒心が急拡大しているため、状況を見ながら判断する。)また、中国の科学技術政策、もしくは北極圏政策に関して査読論文の執筆を進める。
新型コロナの流行で予定していた海外調査が全く遂行できなかった。国内研究集会も、感染状況が比較的落ち着いていた時期に1回実施できたにとどまった。2021年度には国内研究集会を開催する予定だが、海外渡航が可能になるのは2022年度になる可能性が高い。その間、中国の科学技術開発については文献調査を進めるが、せっかく獲得できた研究費なので、海外調査は2022年度にまとめて実施する見込みである。
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