研究課題/領域番号 |
20K01450
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
大澤 麦 東京都立大学, 法学政治学研究科, 教授 (30306378)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 共和主義 / イギリス革命 / ニーダム / ジャーナリズム / 共和制 / レヴェラーズ / ミルトン / クロムウェル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、革命期イングランドにおいて発行された広報誌と呼ばれるニュース媒体を分析することにより、当時における共和主義の特質と動態を明らかにすることにある。この目的の遂行のために、今年度は以下の三点について研究成果をあげた。 (1)前年度末にまとめた、1650~60年発行の共和国政府の広報誌『政治速報』(Mercurius Politicus)の編集者マーチャモント・ニーダムの共和国論に関する論考を、学術雑誌(『法学会雑誌』62-1)に公表することができた。 (2)前項(1)に記した『政治速報』の編者論説を編集することによって1656年に単行本として出版されたThe Excellencie of a Free-Stateを翻訳し、出版社(現時点では出版社名の公表は差し控えたい)に入稿した。これは近い将来、『「自由な国家」の卓越性』という書名で刊行されることになっている。本研究の具体的な研究成果を国民に普及するという意味で、大きな意義をもつと考える。 (3)1648~9年の王制解体・共和制成立期に発行された急進派の広報誌『モデレート』に展開された議論を、議会派の伝統的王制を前提にした急進主義、レヴェラーズの成文憲法構想を基調にした急進主義、そして古典古代の共和主義に立脚した共和派の急進主義との関係を意識しながら検討した。また、これとの関連で、同時期に発行された国王派の広報誌『宮廷速報』の論説を分析した。これらの具体的な成果は、学会発表もしくは学術論文として次年度にまとめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に引き続き今年度も、新型コロナウィルス感染症の世界的感染拡大のため、予定していたイギリスでの資料調査を断念せざるをえなかった。しかし、国内で遂行可能な研究に重点的に取り組むように研究計画を組み直した結果、上記「研究実績の概要」に記したような成果をあげることができた。とくに、共和主義の古典ともいえる著作の翻訳をひとつ仕上げることができたことは、研究の大きな具体的進展であった。 したがって、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、もとより新型コロナウィルス感染症の今後の感染状況によって影響を受けることは必至である。しかし、自分自身の三回のワクチン接種が済んでいるこことに鑑みて、今後イギリスへの渡航の規制が撤廃され続けている限り、可能な限り早い時期にイギリス出張を行い、オックスフォード大学ボードリアン図書館およびロンドンの大英図書館において、今年度遂行できなかった資料調査を行いたいと考えている。そこでの主な作業は日本では閲覧できない書籍、新聞等の調査である。可能であれば、イギリスの研究者との交流や意見交換も行いたい。そして、帰国後はその成果を学術論文もしくは学会発表という形で公表したい。 もちろん、今後感染状況が悪化し、イギリス出張が不可能な場合には、今年度と同様、国内で購入・入手できる資料を用いた研究ということになるであろう。また、ボードリアン図書館所蔵資料については、できるだけ同図書館の複写サービス等も活用したい。いずれにしても、内容としては上記「研究実績の概要」の(3)に記した急進派の広報誌『モデレート』の分析を中心にした研究を大きな軸に据えたい。また、来年度は研究最終年度であることから、これまでの研究全体を総括し、イギリス革命期のジャーナリズムと共和主義政治思想との関係を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に続き今年度も、新型コロナウィルス感染症の世界的感染拡大(パンデミック)のため、予定していたイギリス出張および国内出張を断念せざるをえず、研究費の使用計画の変更を余儀なくされた。とりわけ、イギリス出張は本研究にとって重要なオックスフォード大学ボードリアン図書館およびロンドンの大英図書館での資料調査を含むものであったため、影響は小さいものではなかった。そのことがわかっていただけに、イギリス出張計画はこの1年で何度も立てたが、いずれもパンデミックの前に、実行を断念せ座ざるをえなかった。 したがって、今年度も前年度同様、このことへの対応のために、計上していた旅費・人件費(イギリスで収集した資料の整理のための経費)・その他(イギリスで使用を予定していた複写費や郵送費)の経費を物品費に回し、イギリスの図書館で読む予定であった書物や資料の購入費用に充てることにした。もとより、これですべて補完できたわけではなく、今回生じた次年度使用額は、「今後の研究の推進方策」の欄に記した考えに基づいて、次年度に計画しているイギリス出張の経費に充てたいと考えている。
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