研究課題/領域番号 |
20K01462
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
久保 はるか 甲南大学, 全学共通教育センター, 教授 (50403217)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 環境行政 / 行政組織 / 省間調整 / 政策形成 / オゾン層保護 / 環境影響評価 |
研究実績の概要 |
環境法政策学会(2021年6月19日)での報告「評価制度としての環境影響評価の可能性と限界」において、環境アセスメント手続きについて、日本の環境行政組織(環境省)が、事業所管省が権限を有する行政意思決定過程において、環境配慮のための関与を行えているかどうか、その運用実態を分析した。環境配慮を規定する個別法において環境行政部局の関与が定められている場合、それが環境保全面からの「拒否権発動ポイント」となることで、意思決定に実質的な影響を及ぼす効果がある。しかし、実際には、環境配慮からの拒否権発動の「根拠」となり得る権限規定が限られていること、環境省意見を求める手続きが形骸化している実態が観察されることを指摘した。環境アセスメント手続きで設けられている環境大臣意見もそうした拒否権発動の機会だといえるが、同様に、省庁間調整プロセスにおいて、内閣不一致を避けることを目的になされる事業官庁との事前のすり合わせによって受ける制約、官邸主導の強化により拒否権を発動しうる幅(内容)が狭まっていることなどについて指摘した。この検討は、本研究において、過小代表利益である環境政策の実現という観点からの日本の政策形成プロセスの分析の一部を成すものである。 また、オゾン層保護を事例に地球環境問題への対応(条約の国内実施)について、初学者向け、事業者向けに分かりやすく論点整理して示す論文を執筆した。 さらに、日本との比較のため、ドイツ、イギリス、アメリカの環境行政組織の行政府内の位置づけ(所管の配分、影響力)、政策形成プロセスにおいて果たしている機能などについての研究論文・文献資料を収集し、論点整理を行っているところである(作業中)。大統領制をとるアメリカでは、行政機関の立法へのかかわり方が日本と異なるが、議会制定法による行政への委任の範囲、行政規則による政策立案機能に関する研究の蓄積を参考にする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
拙稿において、日本の環境省の職員が、他省庁との調整・協議プロセスにおいて行政の意思決定に環境配慮の観点を反映させようと戦略的行動を取ってきたことを指摘したが、そのためにどのような戦略を取ったのか具体的な事例を分析することを研究課題としている。2021年度に、他省庁との調整・協議プロセスにおける環境行政組織の官僚の戦略的行動に関して、具体的事例(成功事例・失敗事例)の収集・分析を行うこととしていたが、コロナ禍でヒアリング調査を進めることができなかった。 他国との比較のための研究論文・文献収集など、コロナ禍でも容易に実施できるところから着手している。
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今後の研究の推進方策 |
日本の環境行政組織の特徴について、英語論文を執筆中であり完成させる。そこではまず、環境庁が設立されて後、地球環境問題、中央省庁再編、福島第一原発事故を主な契機として、組織と権限が拡大されてきているなど組織の概要を紹介する。新しい環境問題に対応する際には事業所管省との権限配分がなされるが、環境庁設立当初からの権限配分の方針が生きている側面と、共管の拡大によって変化している面もあることを示す。このように、日本の環境政策形成は基本的に環境行政組織と事業所管省との省間調整に基づくが、近年の官邸主導型政策形成にともない、省間調整の方法が対抗案の提示から協議型に変化していること、環境省職員の政策ネットワークの変化が観察されることなどを示す。 他国の環境行政組織との比較において、環境団体とのネットワークの態様は重要な要素である。日本でもかつての環境庁の職員からは環境団体とのパートナーシップを重視する発言がなされていた。ところが近年、長く環境庁/環境省と関係性を保ってきた環境団体から、環境省職員の環境団体とのパートナーシップに対する意識の変化を聞く。そのような変化の裏付けとなる調査を行う予定である。 残された研究課題である環境行政組織の官僚の戦略的行動に関して、具体的事例(成功事例・失敗事例)の収集・分析を行う。昨年末に環境省が発表した『環境省五十年史』に収録されているオーラルヒストリーと、研究代表者が事務次官経験者に行ったインタビュー調査の記録から、劣位に置かれる環境配慮や将来世代の利益などの価値を政策立案で反映させるために、環境省職員がどのような戦略・工夫を講じたか、また、統治構造・技術・社会といった外部環境の変化(具体的には、中央省庁再編、技術の発展、地球環境問題をはじめとする環境問題の状況変化)を、組織戦略としてどのように利用したのかを明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に、他省庁との調整・協議プロセスにおける環境行政組織の官僚の戦略的行動に関して、具体的事例(成功事例・失敗事例)の収集・分析を行うこととしていたが、コロナ禍でヒアリング調査を進めることができなかったことから、旅費の支出がゼロとなっている。2022年度にヒアリング調査の実施などにともなる旅費の支出を計画している。
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