最終年度(23年度)は、台湾出張を三回行った(9月、11月、12月)。出張理由としては、主に研究代表者が客員教授を務めている国立政治大学を拠点にして、台湾の政治史に関する資料を調査することである。資料収集の対象は、(1)選挙権年齢の引き下げをめぐる政治分析に関する外国語の資料、(2)台湾での選挙権年齢引き下げについてのレファレンダム(22年11月)の動向、および(3)選挙権年齢を規定する中華民国憲法第130条の来歴についての資料、である。 出張の成果については、24年3月に同大学で実施された講演会(「日本と台湾の比較政治史」)で報告された。報告内容については、同大が発行する日本語ジャーナル「問題と研究」で掲載される予定である。また中華圏の代表的な雑誌『思想』に論考(「論民主的終結」(民主主義の終わりを論じる))を提出し、発刊が決まっている(24年秋)。台湾出張では、国立政治大学のスタッフをはじめ、現地の研究者やジャーナリストなどと交流し、とても貴重な機会となった。最終年度は国内の研究交流にも力を入れた。哲学者の國分功一郎氏を勤務先に招き、学術的な指導を仰いだ。 研究テーマ「民主主義理論における未来―権力・責務・代表の時間論的な再考察を通じて」について、研究期間を通じて十分にまとめることができた。とりわけ23年3月および24年3月の二度にわたり国立政治大学で講演会を企画していただき、本研究テーマを報告する機会にめぐまれた。この機会は本テーマをまとめる契機となっただけでなく、中華圏で本テーマを公表するきっかけとなった。
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