研究課題/領域番号 |
20K01466
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
川中 豪 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター, 上席主任調査研究員 (40466066)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 政治体制 / 民主主義 / 政治制度 / 東南アジア / 選挙政治 / 社会運動 / 政治動員 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き新型コロナウィルスの感染拡大で、国内出張や海外調査出張を実施することができなかった。学識経験者との意見交換や現地での観察が難しい状況に置かれたが、現状に合わせて当初の計画を変更し、学術論文のサーベイにもとづく理論的枠組みの整理やインターネット等を通じて入手できる公開データを収集・整理して、研究を進めることができた。 理論的に進展が見られたのは、選挙政治の変容において重大な特徴となっている分極化について、既存研究を整理したうえで、理論の新たな可能性・方向性に暫定的な見通しを立てることができたことである。こうした作業のなかで、重要な学術論文を整理し、一般向けに紹介する記事をウェブ雑誌『IDEスクエア』に掲載した。民主主義的な価値と党派的な利益の個々人における重みの付け方について、数理モデルによる理論と実験を用いた実証というアプローチの可能性を提示した。 加えて、これまでに収集したデータや理論的な整理を踏まえ、本研究のテーマを含む東南アジアを事例とした民主主義の抱える問題を考察した単行書の執筆を進め、刊行できる形に整えた。東南アジアの民主主義が暴力的衝突を引き起こす可能性や、逆に民主主義制度を権威主義的統制に利用したいくつかの経験について説明するのに合わせ、近年の社会運動型政治動員と選挙政治の変容が、民主主義体制のもとでの政治秩序に与える影響を示した。本年度中に刊行とはならなかったが、次年度に刊行する予定となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内出張や海外出張が実施できなかったことで当初の計画を変更する必要が出たが、これまでの研究蓄積やインターネット等を通じた収集作業(公開データの収集、オンライン会議への参加)を通じて、ある程度の情報を得ることができた。また、本研究テーマを重要な柱の一つとする単行書の執筆に取り組むこととし、大きな成果発信につながる作業を進めることもできた。当初とは異なる形ではありながらも、現状に対応しながら、比較的順調に研究活動を進めることができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの感染状況の改善が見込めれば、東南アジアへの現地調査を実施して、現地学識経験者との意見交換、現地でのみ入手可能な情報(現地出版の書籍などを含む)の収集を進め、理論的な見込みの妥当性を試したいと考える。また、引き続き、インターネット、オンライン会議などを使い、追加的な情報収集を実施する。 一方で、刊行予定の単行書を紹介する機会を設け、フィードバックを受けながら、補う論点などを洗い出したい。 また、2022年5月にはフィリピンにおいて正副大統領選挙、議会選挙、地方政府選挙が実施されるため、さまざまな情報通信手段を通じて、その過程を観察し、選挙政治の変容と政治体制、政治秩序への影響に関する考察を深めたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大により、国内外の移動が不可能となり、当初計画していた現地調査や学会参加などの出張が実施できなかったため。
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