研究課題/領域番号 |
20K01466
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
川中 豪 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター, 上席主任調査研究員 (40466066)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 民主主義 / 選挙 / 東南アジア |
研究実績の概要 |
依然として継続する感染症により海外出張が困難となり、現地での直接的な情報収集ができなかった。そのため、研究計画を大幅に変更する必要があった。2022年度では研究に一つの区切りをつけて、これまで進めてきた理論的研究と事例に関する入手可能なデータを整理し、現時点での成果の発表を複数行なった。 さらに、そこでのフィードバックをもとに理論の検証を進めた。 一つには、本研究事業の主題に関する単行書『競争と秩序ー東南アジアにみる民主主義のジレンマ』を出版した。本書では、政治指導者のパーソナリティと情報通信技術の進展を含め、より包括的に、島嶼部東南アジアにタイを加えた5カ国の情報を実証的な基礎として、民主主義の抱えるジレンマを提示し、それが民主主義の安定性に与える影響を整理した。この出版をもとに、2022年7月には、伊藤武(東京大学)と稲田奏(早稲田大学)との対談をオンラインで実施し、研究成果の普及を行なった。 これに加えて、フィリピンにおいて2022年6月に大統領選挙が実施されたため、本研究事業の主たる課題である政治指導者のパーソナリティを中心とした選挙政治が実際に展開されたことから、インターネット上の情報を収集しながら、この事象に関する分析を行なった。その成果を「独裁者一族ーフィリピン・マルコス政権の成立」『IDEスクエア』として発表し、同時に「ゆれる民主主義ー2022年大統領選挙とフィリピン政治」とするオンライン講演会を実施した。 こうした研究成果の発信と並行して、引き続き国内で入手可能な情報収集を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
依然として感染症による影響が続いたため、対象国での情報収集には制約があったが、有識者とのオンラインでの意見交換など、代替的な手段を使って情報収集を進めることができた。また、現時点までに達成された研究についてその成果を発表する機会に恵まれ、さらにフェードバックを得ることもできた。こうした活動を通じて、理論の再検証を行うことが可能になった。また、2022年のフィリピン大統領選挙は、SNSでの情報戦が大きな影響を与え、これまで以上に候補者のパーソナリティが強調されたという点で、本研究事業にとって重要な実証的な基礎を与えたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
所属研究機関が変わったため、それにともなう研究環境の変化によって、現地調査の可能な時期などに制約が生まれたが、業務の一層の効率化によって障害が出ないように対処する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた海外出張(現地調査)が感染症のため実施できなかったため。感染症に関連する渡航規制が大きく緩められてきたので、次年度にこれまで未実施だった現地調査を実施する予定である。
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