最終年度は、3年目に行ったメキシコシティでのインタビュー調査およびデータ分析の結果をもとに、クオータ制の効果の国際比較を行う論文集への寄稿論文執筆のほか、オーストラリアの研究者との共著でメキシコの連邦議会における女性の実質的代表に関する研究を進め、2023年度日本選挙学会大会で研究報告を行った。 本研究では、当初は1年目に予定していたメキシコへの渡航をCovid-19の影響により延期し、zoomなどを通じて現地の研究者と意見交換を行いながら、犯罪政治と呼ばれる現象や選挙をめぐる暴力に関してメキシコ東部ベラクルス州の事例分析を行った。選挙期間中に起こった暴力事件のデータをもとに、ベラクルス州内のどのような自治体で誰をターゲットにした暴力が起こっているのか、その傾向を分析し、組織犯罪を背景とする選挙暴力の実態に接近することを試みた。暫定的な結果からは、ターゲットの偏りに暴力の政治的バイアスが示唆されることや、犯罪組織が拠点から周辺地域に影響力を拡大するプロセスのなかで暴力に地域的偏りが生まれることなどが明らかになった。現在、2024年選挙キャンペーンに関する分析のために、データを収集中である。 他方、パンデミック下の制約で、当初思うように資料収集やインタビュー調査が進まなかったこともあり、メキシコの文脈では暴力との関連でかねてより関心のあった女性の政治参加についての研究を並行して進めた。とりわけクオータ制の効果に関連して、政治的ジェンダー暴力の防止をめぐる法改正プロセスを詳細に検討した。海外の研究者と共同で研究を進め、4年目にはその成果を学会や論文集への寄稿を通して発表することができた。
|