研究課題/領域番号 |
20K01474
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
近藤 正基 京都大学, 公共政策連携研究部, 教授 (80511998)
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研究分担者 |
安 周永 龍谷大学, 政策学部, 准教授 (10612393)
渡辺 博明 龍谷大学, 法学部, 教授 (20308810)
城下 賢一 大阪薬科大学, 薬学部, 准教授 (70402948)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 中道左派政党 / 福祉国家 / 社会的投資 / 排外主義 / 移民・難民政策 / 労働組合 |
研究実績の概要 |
2020年度は、オンライン形式で二度、研究会を開催し、中道左派政党に関する国際比較・事例研究文献の報告と議論を行った。 一般的に言って、中道左派政党は、ポスト工業化にともなう産業労働者の減少という共通の危機に直面している。ただし、具体的な危機状況は各国多様であり、中道左派再興の道筋も一つではない。主に選挙でのパフォーマンスに着目すると、先行研究では以下の三つの戦略が示されている。第一に、新中間層票の獲得である。所得保障を重視し、労働組合との結びつきが強いと中道左派政党の支持は縮小するが、新中間層が求める投資的福祉政策を掲げ、労組と袂を分かつことが支持を拡げるという研究がある。第二に、低所得者・労働者票の掘り起こしである。中道左派衰退の主要因を、低所得者の政治参加が低調であることや、組織労働の衰退により労働者の棄権が増えていることに見出す研究がある。再分配政策の充実化を掲げ、組織労働の活性化に取り組むことが、党の再興につながると考えられる。第三の戦略は、労働者票を掘り起こす点で第二の戦略と共通しているが、これを排外主義によって達成しようとするものである。労働者層は社会・文化的にリベラルでなく、中道左派政党のリベラル路線とミスマッチであったという先行研究の指摘を踏まえるなら、移民・難民政策等で排外主義的な姿勢を示すことも労働者の票を獲得する道であろう。 以上、①投資路線、②再分配路線、③排外主義路線という三つの戦略が示されたが、各国の中道左派政党はどれを採用するのだろうか。競合する政党の性格、労働者層・新中間層の規模や政治参加の可能性、選挙制度などによって採用される戦略は異なるであろう。こうした分析視角に基づき、2021年度は輪読とあわせて各国事例分析を進めて、考察を深めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究会での文献報告と議論を通じて、中道左派政党が直面する危機とは何か、同党が採り得る再興戦略にはどのようなものがあるか、各国の中道左派政党の政策や党組織にはどのような違いがあるのかについて理解を深めることができた。こうした作業は、研究者の間で問題意識を共有し、分析視角に一貫性をもたせるためにも必要と考えている。ただ、新型コロナ感染症の拡大によって現地調査ができず、資料収集やインタビューは行えなかった。事例研究は進んでいるとは言い難い。こうした事情から、進捗状況を「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染症が収束していれば、ドイツ、スウェーデン、韓国、日本での調査を行う。中道左派党や労働組合に関する資料を収集し、政治家や組合幹部へのインタビューを実施し、事例研究を本格的に進める予定である。感染症が収束していなければ、引き続き関連文献の報告と検討が作業の中心になると思われる。ただし、インターネット上で集められる資料は引き続き収集していく。また、オンライン形式でのインタビューも可能であれば実施したい。こうした作業を通じて、事例研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査ができなかったため次年度使用額が生じた。2021年度以降に現地調査の回数を増やして対応したいと考えている。
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