研究課題/領域番号 |
20K01475
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松林 哲也 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (40721949)
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研究分担者 |
北村 周平 大阪大学, 感染症総合教育研究拠点, 特任准教授(常勤) (90812090)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 投票参加 / 投票率 / 選挙 / 自然実験 / 因果推論 |
研究実績の概要 |
本研究では3つのプロジェクトを進めてきた。同時に投票啓発活動の効果検証に関するプロジェクトを立ち上げた。
(1) アメリカ合衆国における投票制度改革と投票率:アメリカン大学のLeighley教授が作成した全米50州の投票制度データベースとCurrent Population Surveyデータを組み合わせ、期日前投票制度や投票者ID制度が投票に与える影響を推定するための回帰分析を行った。ここまでの分析から各制度は投票参加に複雑な影響を与えていることがわかったため、結果の解釈を慎重に行っている。 (2) 投票コストが投票タイミングと投票率に与える影響:投票期間中の投票コストの変動が投票参加のタイミングや投票率に与える影響を明らかにする論文を完成させた。この論文は政治行動論のフィールドトップジャーナルであるPolitical Behaviorから出版されることが決まった。 (3) 国政選挙における区割り変更と投票率:差の差法を使って2016年選挙からの参院選選挙区の合区(徳島県と高知県、鳥取県と島根県)が投票率に負の影響を及ぼしたこと、負の影響の大きさが4つの県で大きく異なることを確認した。この分析結果は2021年11月に出版した『政治学と因果推論』にて報告した。 (4) 投票啓発活動と投票率のフィールド実験:大阪府豊中市選挙管理委員会事務局の協力を得て投票啓発フィールド実験を実施した。2021年衆院選における新有権者を対象とし、その中で投票記録が入手可能であることが事前にわかっていた約2500人に対して、3種の異なる投票啓発メッセージ(介入群2つと対照群1つ)を選挙期日の約2週間前に無作為に送付した。選挙後に選挙管理委員会事務局から提供された投票記録データを用いて分析したところ、啓発メッセージによる投票率向上を確認することはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全てのプロジェクトにおいて進捗は順調である。アメリカ合衆国における投票制度改革と投票率のプロジェクトについては、渡米してLeighley教授と面談しながら論文執筆を進める予定であったが、日米の感染状況が改善しないため渡航を見合わせている。メールやオンライン面談で密に連絡を取り合いながら研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
継続中のプロジェクトを推進すると同時に、新たな研究プロジェクトを立ち上げる。
(1) アメリカ合衆国における投票制度改革と投票率:Leighley教授と分担して、研究成果を論文にまとめる。 (2) 国政選挙における区割り変更と投票率:新たな研究プロジェクトとして、1990年代の選挙制度改革の区割り変更とそれに伴う議員定数不均衡の是正が投票率に与えた影響を分析する。特に議員定数不均衡是正の影響をより強く受けた地方の選挙区で投票率が大きく変化した可能性を検証する。 (3) 投票日の気温が投票率に与える影響:投票日の気温が投票率に与える影響を調べるプロジェクトを進めている。10度以下の低気温や30度以上の高気温では投票率が下がる、つまり気温と投票率には逆U字型の関係があるのではないかという仮説を検証する。投票率と気温の情報を含む国際比較データの整理を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外学会への参加や研究打ち合わせの実施が難しかったため、予定通りの執行ができなかった。今年度は学会参加、データ収集、学術誌での論文掲載のオープンアクセス化などで使用する計画である。
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