本研究では当初から3つのプロジェクトを進めてきた。さらに、投票啓発活動の効果検証に関するプロジェクトを立ち上げた。 (1) アメリカ合衆国における投票制度改革と投票率:アメリカン大学のLeighley教授が作成した全米50州の投票制度データベースの拡張を行ってきた。現在もデータのクリーニングを進めている。 (2) 投票コストが投票タイミングと投票率に与える影響:投票期間中の投票コストの変動が投票参加のタイミングや投票率に与える影響を明らかにする論文を完 成させた。この論文は政治行動論のフィールドトップジャーナルであるPolitical Behavior誌に掲載された。 (3) 国政選挙における区割り変更と投票率:差の差法を使って2016年選挙からの参院選選挙区の合区(徳島県と高知県、鳥取県と島根県)が投票率に負の影響を及ぼしたこと、負の影響の大きさが4つの県で大きく異なることを確認した。この分析結果は2021年11月に出版した『政治学と因果推論』にて報告した。 (4) 投票啓発活動と投票率のフィールド実験:大阪府豊中市選挙管理委員会事務局の協力を得て投票啓発フィールド実験を実施した。2021年衆院選における新有権者を対象とし、その中で投票記録が入手可能であることが事前にわかっていた約2500人に対して、3種の異なる投票啓発メッセージ(介入群2つと対照群1つ)を選挙期日の約2週間前に無作為に送付した。選挙後に選挙管理委員会事務局から提供された投票記録データを用いて分析したところ、啓発メッセージによる投票率向上を確認することはできなかった。この研究成果は『選挙研究』での論文掲載が決まっている。
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