研究課題/領域番号 |
20K01476
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
砂原 庸介 神戸大学, 法学研究科, 教授 (40549680)
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研究分担者 |
秦 正樹 京都府立大学, 公共政策学部, 准教授 (10792567)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地方議会 / 選挙制度 / 政党 / 地方政治 / 政府間関係 |
研究実績の概要 |
一年目は,単記非移譲式選挙(SNTV)で選出される地方議会議員が政党間・政党内で競争することに注目した研究を行った。大阪の地方議会を対象として,地方議会の議事録についてのテキスト分析から,大阪維新の会という右翼的とされる政党が議会に参入した時に,他の政党に所属する議員たちが地方議会の本会議で右翼的なトピックについて語る機会が増えること,また,維新の会の参入のみならず,特に分権的な性格が強い自民党において,自民党議員が多いほど右翼的なトピックについて語る傾向を持つことを検証した。この分析については,秦正樹・西村翼と共著で,『日本は「右傾化」したのか』(慶應義塾大学出版会,2020年)所収の論文「地方議会における右傾化-政党間競争と政党組織の観点から」として発表された。 さらに,地方自治体同士の連携が困難で,互いに激しく競争・競合する日本の現状について,地方政府内の二元代表制と地方議会の選挙制度,地方政府を越える政党の不在と強い長の存在,そして集権・分散的な財政システムから説明した研究を,『選挙研究』36巻2号に所収の論文「政治制度と地方政府間関係-集合行為アプローチの観点から」として出版した。この分析に活用した先行研究の検討を用いながら,地方自治の教科書の一節に広域連携についての説明を寄稿している。従来広域連携のような説明は地方自治の教科書のマイナーなテーマであったと考えられるが,その重要性を改めて指摘し,これまでの日本の地方自治研究において十分に意識されてこなかった理論的な展開について紹介している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は二年目に行う予定であった,地方議会の議事録のテキスト分析を用いた研究を一年目に発表することができた。その他,他のプロジェクトとの組み合わせによって,住民投票に関するサーベイ実験の計画や,地方議会議員の定数についてのデータ収集も当初予定していた以上に進み,予定より早い段階で分析を行うことが可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
一年目に発表した地方議会における政治的競争の分析の成果を踏まえて,英語での論文発表を行う。この成果は国際政治学会(International Political Science Association)で報告する予定である。また,一年目に発表した地方自治体間の連携についての分析をベースにしながら,住民投票についてのサーベイ実験の結果を利用し,地方政治における多様な民意の競合がもたらす帰結についての分析をまとめる予定である。さらに,これらの研究発表と並行して地方議員の定数を用いた準実験的手法での分析を整理し,国際学会等で報告を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
一年目に予定していた調査の予定を変更し,二年目以降に調査を実施することとしたために次年度使用額が生じた。
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