研究課題/領域番号 |
20K01479
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
境家 史郎 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (70568419)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 憲法 / 国民投票 / 防衛政策 / 世論調査 |
研究実績の概要 |
令和3年度では、前年度に実施したオンライン調査実験の回答データの分析を進め、結果の一部を学術論文としてまとめた。その内容は『中央公論』2021年12月号に掲載され(「“非”立憲的な日本人―憲法典の死文化を止めるためにすべきこと」)、同論文の英語版もオンラインで公開された(”The ‘non’ constitutional Japanese: What Needs to Be Done to Avoid a Dead Constitution” Discuss Japan - Japan Foreign Policy Forum, No. 69)。この論文では、憲法によって国家機関の行動を厳格に制約しようとする立憲主義の原理を、現代日本人の多くが理解していないか、あるいは認識はしていてもコミットしていないという実態が明らかにされている。同論考の内容はヤフー・ニュースでも取り上げられるなど、一般社会に向けた研究成果の発信もなされた。
また当年度では、前年度に引き続き、国民の防衛政策観に関する過去の世論調査データについて、さらに収集を進めた。当年度では、政府、NHK、朝日新聞社、読売新聞社、毎日新聞社が戦後に実施した世論調査の結果を網羅的に調べていき、おおむね2000年頃までについてデータベース化がなされた。データベースには、各世論調査の質問文や選択肢の文言、回答集計結果の数値だけでなく、各調査のメタデータ(調査実施日、標本抽出法など)の情報も含まれており、他に例のない包括的なデータセットとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度には、オンライン調査実験から得られた回答データを分析し、学術論文として公刊することを目標としていたが、計画通り、分析結果が『中央公論』2021年12月号に掲載され(「“非”立憲的な日本人―憲法典の死文化を止めるためにすべきこと」)、同論文の英語版もオンラインで公開された(”The ‘non’ constitutional Japanese: What Needs to Be Done to Avoid a Dead Constitution” Discuss Japan - Japan Foreign Policy Forum, No. 69)。
また、当年度では、前年度に引き続いて、国民の防衛政策観に関する過去の世論調査データについて収集を進めることを計画していたが、この作業も予定通りに行われている。当年度までに、1940年代から2000年頃までの世論調査結果がデータベース化されており、令和4年度中のデータベース完成が見込める状態にある。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、令和4年度では世論調査データベースの完成に向けて注力する。データセットがある程度作られた段階で、暫定的な分析を始め、戦後日本人の防衛観を実証的に跡付けていく。また、当年度では、オンライン調査実験のデータを用いた研究を(令和3年度に発表したものとは別に)まとめ、学会発表等を行う予定である。
令和5年度は分析内容の確定と結果の解釈に専念し、各時期のエリートレベルでの防衛論議と世論との対応関係について、また実験研究と既存世論調査の結果との整合性について検討を行う。各時期の日本人の防衛観について、本研究では基本的に探索的、記述的分析のスタイルで明らかにしていく一方、総体として、境家が『憲法と世論』(2017年)で暫定的に提示していた「現状保守主義仮説」――政府が防衛政策を現状変更しようとすると、一時的に反発する有権者は多い。しかし新政策が既成事実化すると多くの人が受け入れるようになる――の妥当性を検証することも目的にしている。以上すべての研究成果について、最終年度には関連学会で総括的な報告を行い、学術論文あるいは研究書としてまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度には、コロナ禍で各種学会がオンライン開催になり、旅費が不要になったこともあり、多少の残額が発生した。しかし、未使用額は大きなものではなく、令和4年度には学会の対面開催も実施される方向にあるので、令和4年度分の助成金と合わせて問題なく使用できると考える。具体的には、2022年5月の日本選挙学会で(前年度に行う予定であった)研究発表を行うが、そのための旅費を支出する。
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