研究課題/領域番号 |
20K01487
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
林 昌宏 常葉大学, 法学部, 准教授 (00632902)
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研究分担者 |
川島 佑介 茨城大学, 人文社会科学部, 准教授 (60760725)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地方港 / 国土交通省 / 国際競争力強化 / コンテナ港 / クルーズ船 |
研究実績の概要 |
本研究は、港湾をめぐる集権的な国家政策が顕著となっているところで、地方政府が管理・整備を続ける地方港のサバイバル戦略の特徴は、どのようなものなのかを明らかにするものである。 2021年度は、前年度に引き続き新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行によって、県境を越えての調査活動を制約されることが多かった。感染症の流行状況を見極めつつ、地方港とそれを管理・整備する地方政府は、クルーズ船の誘致やコンテナ航路の維持・新設に向けて、どのようなサバイバル戦略を採用し、中央政府や他のそれらといかなる関係を構築しているのかを明らかにする課題に取り組んだ。そのために茨城港、鹿島港、東京港、横浜港、清水港、三河港、衣浦港、名古屋港、四日市港の調査を進めた。なお、東京、横浜、名古屋の各港を調査したのは、大都市の港湾と地方港との差異を明確化するためである。 具体的には、茨城、鹿島、東京、横浜、清水、三河、衣浦、名古屋、四日市の各港に関する港湾計画書、年史、レポート、統計資料などを収集し、港湾の整備状況、あるいは近隣の港湾との競合や協調が、いかにして進められているのかを分析した。それから茨城港については、茨城県をはじめとする地方自治体及び民間企業にインタビュー調査を実施した。これらに加えて、近年の港湾政策に関する資料やレポートを入手し、国土交通省による港湾の国際競争力強化のための諸政策が、どのように導入・実施され、いかなる成果をもたらしたのかについて分析を進めることができた。 そのほか山陰地方(舞鶴港)や九州・沖縄地方の港湾(主に長崎港、佐世保港、那覇港)に関する文献やレポート、統計資料を可能な限り集めた。これにより次年度の調査に向けた準備に一定の目途が立った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、予定していた調査が極めて困難になったことが原因である。 ただし、感染症が一時的に収束したタイミングで、文献調査やインタビュー調査を進めることができた。また、関係資料を入手・分析できたこともあり、前年度からの遅れは一定程度回復できたものと考えられる。そのため区分を「(3)やや遅れている。(Slightly Delayed)」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、これまでに収集してきた資料やデータをもとに、まず中央-地方政府間関係や地方分権的な制度の配置及び作動に着目しつつ、国土交通省による港湾の国際競争力強化のための諸政策を分析する。 つづいて、今後も新型コロナウイルス感染症の流行状況に左右されることが見込まれるが、県境を越えた移動に制約が無ければ、以前から計画していた山陰地方(舞鶴港)や九州・沖縄地方の港湾(主に長崎港、佐世保港、那覇港)の資料・インタビュー調査を実施していきたい。これを踏まえて、地方港とそれを管理・整備する地方政府は、クルーズ船の誘致やコンテナ航路の維持・新設に向けて、どのようなサバイバル戦略を採用し、中央政府や他のそれらといかなる関係を構築してきたのかという点を明らかにしていく。さらには、こうした関係のもとでの政策決定過程や導出された政策帰結には、どのような特徴が備わっているのかを明らかにする課題にも取り組む。これらの成果をもとに、所属している学会や研究会において発表を行い、論文等を執筆・公表していく予定である。 それから新型コロナウイルス感染症の拡大が港湾政策、地方港とその後背地に及ぼした影響も次第に浮き彫りになりつつある。上記の研究を進めていくことで、突発的に生じ得る危機に対して、インフラの整備、交通政策(港湾政策も含む)は、いかに備えておくべきかという点についての検討も可能になるであろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症によって、県外(特に首都圏)への出張などが大きく制約された。そのため、旅費を中心に未執行額が発生し、次年度使用額が生じている。 今後は、新型コロナウイルス感染症の流行状況を見定めながら、研究調査のための出張を実施するなどして、研究実施計画の遅れを取り戻していきたい。
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