研究課題/領域番号 |
20K01491
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研究機関 | 阪南大学 |
研究代表者 |
賀川 真理 阪南大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (10299018)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 日系ペルー人 / クリスタル・シティ抑留所 / ブランカ・カツラさん / 戦後補償 / 第二次世界大戦 / ツマン耕地 / チクライヨ市 / カリフォルニア州 |
研究実績の概要 |
2020年度は、当初予定して国外でのリサーチが新型コロナウイルスの感染拡大により不可能になったため、国内でできることに限定して研究を進めた。 具体的には、第1にアメリカに住んでいる元収容者の方への対面インタビューに変えて、郵便で趣旨説明とアンケート依頼を行った結果、2020年5月に書面でのインタビュー調査を快諾して頂いたことである。その後日本からアメリカへの郵送が事実上できなくなったため、メールと電話でのインタビューを重ねた。その結果が、「第二次世界大戦中にアメリカによって強制連行された日系ペルー人―ブランカ・カツラさんの物語を通して」『阪南論集』社会科学編・第56巻第2号(阪南大学学会、2021年3月)303-321頁である。 カツラさんは、12歳でペルーからアメリカのクリスタル・シティ抑留所に家族とともに移り住むことを余儀なくされたが、ぺルーと抑留所、そして戦後アメリカでの生活について鮮明な記憶を持たれており、研究者の課題に対する取り組みに共感して頂き、ペルーで連行された父からの手紙や個人で所有しておられた抑留所生活直後の同所での写真の提供、アメリカでの苦難を抱えた生活、戦後補償との係わりについて、詳細に教えて頂き、これまでの研究の裏付けと新たな発見ができた。 第2にこれまで手を付けることができていなかった、ペルーなどからクリスタル・シティ抑留所に移送され、戦後日本に送られた方々との接点を持つ行動をとったことである。具体的には、すでにアメリカでのインタビューをさせて頂いた方に、手持ちの「帰国者名簿」から知っている方を教えて頂き、手紙で研究の趣旨と対面もしくは書面などでのインタビューを引き受けて下さるかどうかの依頼を行った。これまでに、モチヅキ裁判における戦後補償において、日本の窓口になった方(2018年にご逝去)のご家族から、資料提供をして頂けるとの返事を受けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、新型コロナウイルスの感染拡大により当初予定して国外でのリサーチが不可能になったが、先行きの見通しがなかなかつかず、結果として国内で実施可能なことに着手するまでに時間を要してしまった。 また、アメリカに住んで居られる研究対象者とのメールでのやり取りは、ご本人と直接ではなく、ご家族を介して行っていたため、回答内容の確認などにやや時間を要し、5月に書面でのインタビューをお引き受け頂いたのち、不明な点を明らかにして、全容を把握し、最終的に写真の提供を受け、論文の原稿内容を確認して頂くまでに8か月を要した。 さらに当面は日本国内でのインタビューに焦点を絞ることが得策であると判断し、すでにアメリカでインタビューをさせて頂いたカルメン・モチヅキさんと連絡を取り、戦後、クリスタル・シティ抑留所から日本に向かった方々のうち、直接知っている方を紹介して頂くことにした。2020年度末には、こうしてモチヅキさんと、やはり以前にインタビューさせて頂いたアリス・ニシモトさんから紹介して頂いていた元クリスタル・シティ抑留所の収容者の方々へのインタビューを依頼できないかとの問い合わせを、まずは12名にお願いすることにした。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の前半は、まだ夏期休業中以降における国外渡航の可能性が見通せない社会状況であるため、国内での研究に焦点を当てた計画を立てている。 昨年度に引き続き、本年度はまずテキサス州のクリスタル・シティ抑留所などから日本に送られることになった方々について記された「帰国者名簿」を基に、同名簿に掲載されているできるだけ多くの方々と連絡を取り、対面及び書面でのインタビューもしくはアンケートの可否を見極めることとする。 同時に、主として以下の3点について検討する。第1に、第二次世界大戦中にクリスタル・シティ抑留所に入られていた方々の「家族名簿」の分析を行うことにより、同所に入られていた方々がどの国(州)から同地に送られ、どのような職業及び家族構成であったのか、そして同所での日本人組織や役割などについての全容が明らかになると考えられることから、これらについて過去にアメリカのナショナル・アーカイヴスで収集した史料と照らし合わせ、早速論文にまとめることとする。第2に、昨年度に問い合わせをした元クリスタル・シティ抑留所に入られていた方(もしくはご家族の方)からの返信の中で、まずはモチヅキ裁判での和解に基づいて戦後補償を受ける日本側の窓口になられた方のご遺族から、資料提供をして下さるとの連絡を受けたため、今後同資料を拝見し、日本に帰国を余儀なくされた「元抑留者」の方々が、実際にどのようなプロセスで補償金を受け取ることができたのかを明らかにしたいと考えている。そして第3に、昨年度および本年度に調査依頼をした方々とのインタビューなどが可能であるとわかり次第、できるだけ速やかにそれらを実施するための手はずを整える。 また、今後アメリカなどへの渡航が認められるようになれば、特に本件に関する戦後補償に係わってこられた方々とのインタビューに焦点を当てる予定であり、そのための準備を整えたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大により、国外研究が不可能となったため。
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