研究課題/領域番号 |
20K01491
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研究機関 | 阪南大学 |
研究代表者 |
賀川 真理 阪南大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (10299018)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 日系ペルー人 / 随行繁房さん / 随行繁松さん / ウァウラ(Huaura) / クリスタルシティ抑留所 / 広島 / モチヅキ裁判 / 戦後補償 |
研究実績の概要 |
2022年度においては、第二次世界大戦中にアメリカ政府によりペルーからアメリカに強制連行され、戦時中クリスタルシティ抑留所に抑留されたのち、一家で日本に渡った元日系ペルー人のうち、本研究では二人目の事例となる随行繁房さんについて研究を進めた。引き続きコロナ禍であったため、前年度からの郵便による研究調査依頼に対する回答及び資料提供、そしてこれらに対する電話での追加質問と回答に基づき論文を執筆し、その研究成果として学内紀要『阪南論集・社会科学編』第58巻第2号に「第二次世界大戦中にアメリカによって強制連行された日系ペルー人―クリスタルシティでの抑留後一家で日本に渡った随行繁房さんの場合」(査読論文)(阪南大学学会、2023年3月、13-34ページ)を刊行した。 また日系ラテンアメリカ人に対する本格的な戦後補償を求めたモチヅキ訴訟(1998年に和解成立)の原告代表であるカルメン・モチヅキさんについて、そのパーソナル・ヒストリーを論文としてまとめるため、その準備として2023年2月中旬からアメリカのロサンジェルスに行き、事前に送付したインタビュー内容を中心として対面でのインタビュー及び電話での追加質問を行った。 このほか、モチヅキ訴訟の際に戦後日本に渡った(戻った)元クリスタルシティ抑留所の抑留者たちが戦後補償を申請したが、その際の取りまとめ役であられた小山光昭さんが執られた各種手続きについて、当時、アメリカ側に提出した審査書類などを関係者から入手した。これらを基に、今後モチヅキ裁判の全容を明らかにしたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年4月からの研究課題であるが、この時から本務校において国外(アメリカ)への出張が禁止されたため、本来は国外での研究をメインに行うはずの課題であったが、それが約3年間不可能となった。そのため、現時点ではようやく2023年2月に1回国外出張を行い、元クリスタルシティ抑留者の方とのインタビューができただけである。 一方で、コロナ禍でもできることを探し、戦後日本に帰国された元抑留者の方々と連絡を取ることを試み、これまでにお二人の方について対面と、郵送及び電話でのインタビューを通じて論文としてまとめることができた。さらに、当事者は亡くなられたものの、私の出した手紙を読んでくださったご家族の方が協力を申し出て下さり、その方から戦後補償に関する資料提供をして頂いたり、メールで連絡を取り合い、質問などに答えて頂いたりすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでにアメリカでインタビューを行った方々についての文字起こしと、手元にある史料を紐解いて論文を執筆すると同時に、引き続き日本と国外におられる元抑留者の方々とのインタビューを可能な限り行いたいと考えている。 さらに来年度はアメリカでは大統領選挙の年であり、連邦下院議員も全員選挙の対象となるが、できればモチヅキ裁判に関係した議員の方に何らかの形でインタビューを行うことと、ペルーに戻った日系人の方々の足跡とその後の生活についても再度調査を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に使用額が生じた理由は、本研究における主な支出が国外におけるフィールド・ワークに必要であったものの、コロナ禍により2020年4月から2022年の夏季休業が終わるころまで国外に行くことが認められなかったためである。 2023年5月現在、ようやく新型コロナウイルス感染症が蔓延する前とほぼ変わらない状態でフィールド・ワークができる状況に転じた。そのため、できれば研究期間(5年間)を延長し、本来の研究課題を達成するために、アメリカおよびペルーなどにおけるフィールド・ワークと史料(資料)調査を、そして国内においても同様の調査を行いたいと考えている。
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