研究課題/領域番号 |
20K01492
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
宗前 清貞 関西学院大学, 総合政策学部, 教授 (50325825)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 医療制度 / 医療政策 / 新型コロナウイルス / 医療供給体制 / 専門知 / 公共政策 |
研究実績の概要 |
本研究は、当初1990年代のEBM導入をめぐる政治過程の解明を目指していたが、情報源への接触に限界があったこと(当人は厚労省医系技官の幹部であり、危機管理上の問題から外部との接触に一定の制限があった)、またコロナ禍において移動全般に配慮が求められたことから、当該領域においては大きな進展を得ることができなかった。 それに代えて、そもそもエビデンスとは何か、治療行為はもちろん政策決定における「根拠に基づく」とはどういうことかを、文献を中心に知識社会学的探索を行った。これによって、「確からしさ」や「信頼性のある」証拠とは何かについて基本的な理解を深める事ができた。 加えて、コロナ禍における医療供給体制の維持について、専門家と政治家(閣僚)や官僚らの間で起きた相互作用を観察した。この間、寺谷俊康医師(厚労省課長補佐)、阿南英明医師(神奈川県統括官)、高山義浩医師(沖縄県中部病院)、西塚至医師(東京都保健局担当部長)、野尻孝子医師(和歌山県医監)、坂本昇医師(川崎市医務監)、劔陽子医師(熊本県菊池保健所長)、木下栄作医師(広島県健康福祉局長)らにインタビューを実施し、医療専門性に基づく知見が政策に反映されている(ないしされない)過程の質的調査を実施した。 また、このことに関連した研究の中間報告を(1)日本政治学会2022年度研究大会共通論題@2022/10/1(2)関西大学経済・政治研究所公開講座@2022/10/15(3)東京財団歴史検証研究会@2023/1/30で実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要でも記したように、本研究課題を申請した時点において狙っていた、90年代医療制度におけるEBMの導入について、ミクロ的に観察するという研究は予定よりかなり遅れているが、反面、コロナ禍における科学的知見と政策への反映に関する証言データは予想を遥かに超える形で収集に成功した。そのため、次項目で述べるような研究推進の方向性修正を行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を一年間延長し、また新型コロナウイルス感染症が5類相当の再分類がなされたことで、当初想定していたEBM導入の過程に関する聞き取りを集中的に(特に夏季)実施し、遅れを取り戻す。他方で、この間付随的に収集したコロナ禍の行政における専門的知見の反映に関する分析を繰り入れる形で、専門性の行政過程についての理解を深めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍において情報収集のための出張等に制約が生じ、予定していた出張を行わなかったため。 2023年度は、(1)インフォーマントより話を聞くための東京等出張旅費(2)医療制度を研究する政治学者を招いて研究会を行い、情報共有の機会を持って研究進捗の挽回を図る呼び寄せ旅費(3)旅行中の作業継続を支援する電子機器(ルーター、ノートPC)(4)研究に直接関係する図書・雑誌・データベース利用料等の支出を行う。特に(1)と(2)の比重が大きくなる見込み。
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