研究課題/領域番号 |
20K01502
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中村 綾乃 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 准教授 (10467053)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ドイツ帝国 / 植民地 / ヴィルヘルム・ゾルフ |
研究実績の概要 |
本研究では、ドイツ帝国(1871-1918年)の統治下にあった太平洋植民地を考察対象とし、植民地政策の比較分析を行う。さらに、ドイツの植民統治の経験が日本の植民地統治に与えた影響について検討を試みた。これらの分析を通じて、まずドイツ帝国の植民地支配の構想の中での南洋植民地の位置づけを明らかにし、日独間の植民地統治の相互影響を検討することを目的としている。 日独間の植民地統治の相互影響を検討する上で、1921年から1928年まで駐日ドイツ大使を務めたゾルフ(Wilhelm Solf)に注目する。ゾルフは、サモア総督および植民地長官、外務長官として、帝政期のドイツの植民地政策を主導した人物である。当該年度は、外務長官としてのゾルフの事績を跡づけ、彼の植民地構想の分析に重点を置いた。ゾルフが唱えたドイツ帝国の植民地統治理論は後藤新平の他、南洋群島の統治に携わった植民学者ないし植民地政策論者も参照している。今後は、ゾルフ、後藤新平、矢内原忠雄、山本美越乃、高岡熊雄の議論に注目し、これらの論者を介した「植民地統治の経験の相互参照と影響」を検討する必要があることが明らかとなった。 研究計画においては、ドイツ連邦文書館および外務省外交政治資料館、東京大学経済学部および琉球大学において史料調査、研究を行う予定であった。しかし当該年度は海外渡航の制限と国内移動の自粛があり、予定していた文書館と図書館における資料調査はできなかった。研究計画の一部を変更し、デジタルアーカイブと文献、資料の取り寄せ等を活用し、学会や研究会等はオンライン会議システムを用いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は海外渡航の制限および国内移動の自粛があり、予定していた史料館および図書館等における史料調査を行うことはできなかった。また、参加することを予定していた国際学会が開催延期となった。上述の理由により、研究計画の一部を変更したたため、本研究課題の進歩状況はやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、他の植民地帝国との関係、アフリカと中国の植民地行政との連関と関係性を視野に入れ、ドイツ帝国の南洋支配の背景と動因、構想を明らかにしていく。特に、ドイツニューギニア会社およびドイツ通商農業会社の動向に焦点をあてる。ドイツ領ニューギニア(1884年から1914年)の原住民、外国人労働者、商人、入植者の法的地位の規定、管理、土地問題に関する政策を分析する。特に、原住民と外国人との結婚によって生まれた「混血児」、年季労働者の法的地位と処遇の相違に分析の重点を置く。日本の植民学者ないし植民地政策論者の議論の系譜を跡づけた上で、矢内原忠雄と山本美越乃、高岡熊雄の南洋統治理論を比較分析し、ドイツの導入した政策との連関性を検討する。 主たる調査対象の史料、その所蔵機関は、ドイツ連邦文書館および外務省外交政治資料館、プロイセン枢密国立文書館、琉球大学矢内原忠雄文庫および東京大学経済学部である。またドイツ植民地協会と全ドイツ連盟の関連文書、ゾルフ個人文書を通して、ドイツ側が参照、分析した植民地経営について検討する。今年度以降も渡航制限や移動自粛により、渡航が難しい場合はデジタルアーカイブやオンライン会議のシステムを活用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は感染症拡大予防措置にかかる渡航制限および移動の自粛により、ドイツの文書館における史料調査、国際学会への参加ができなかった。海外渡航および滞在費の予算は、デジタル・アーカイブズの購入費用に充てたため、差額が生じた。 今年度以降も、海外渡航および移動の自粛により渡航や国内移動が困難となった場合は、デジタルアーカイブズとオンライン会議のシステムを利用する。
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