研究課題/領域番号 |
20K01503
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山根 達郎 広島大学, 人間社会科学研究科(国), 准教授 (90420512)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 国際平和活動 / アフリカ / 紛争解決 / 安全保障 / アフリカ連合(AU) / 欧州連合(EU) / 国連 / サヘル地域 |
研究実績の概要 |
アフリカで生じている武力紛争の解決及び防止のための制度化に向けたこれまでの国際的努力の仕方が、揺らぐ国際秩序を前にして変容してきている。アフリカにおける国際平和活動では、国連のみならず、多様な平和・安全保障アクターがこれらの問題に取り組むが、本件研究費の採択時(2020年度採択)には、これらの複数のアクターがどのようにして連携を深め、また困難に直面しているのかについて、学術的に問うことを目的として本件研究が開始された。 このような問題意識のもと、本研究は、国連、アフリカ連合(AU)、欧州連合(EU)とがどのような政策連携をアフリカにおける平和・安全保障ガバナンスの形成の中で実践し、どのような学術的考察が可能なのかについて研究を進めてきた。アフリカにおける紛争対応をめぐり、これらを含む多様なセキュリティ・プロバイダーとも呼べるアクターが、それぞれの政策目的を達成しつつ、政策連携を深めているのかという鳥観図的研究は未だ手薄なままとなっていた。さらに、近年ではサヘル地域で顕著だが、テロによる席巻と、クーデター政権によって国内統治がリベラルな平和構築の思想とは異なる方向で国家破綻が深刻化しており、これに加え、2022年以降にはロシアによるウクライナ侵攻がアフリカ平和・安全保障の行方にも少なからず影響を及ぼすという事態となった。 そこで、本研究では、当初の研究目的に沿い、最近の国際情勢のコンテクストも組み込みつつ、当該分野の文献研究を進め、補足的にAUやEUの関係者への聞き取り調査を行ってきた。このことで、両地域機構の平和・安全保障政策の意図と実践上の課題を明らかにし、それらが国連あるいはG5サヘル等の多国籍軍の動向にどのような課題が投げかけられているのか、またアフリカ平和・安全保障という問題設定からどのように位置付けられるのかについて考察してきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでCOVID-19による外出・国外渡航制限にて本件研究の国内・国内出張ができずにいたが、2023年度についてはこれまでの出張調査の遅れを取り戻すことができた。研究学会での研究報告に加え、国内研究機関での調査、さらには、EU本部(ブリュッセル)、AU本部(アディスアベバ)への両国外出張が今年度中に完了し、概ねの研究調査が完了したことから、研究進捗状況としては順調に進展していると自己評価を行った。ただし、前回行った研究実績報告で予定していたとおり、予定終了年度を1年延長することとした。これにより未使用部分の予算を国内・国外出張費等にて使用させていただき、より充実した研究成果へとつなぎたいと考えている。 研究報告としては、日本国際連合学会2023年度研究大会、及びアジア経済研究所研究会で研究報告を実施した。国連学会では、国際秩序とアフリカの平和・安全保障の動向との関連について報告した。また、アジア経済研究所では、EUとアフリカのテーマについて、平和・安全保障分野におけるEU研究及びAU研究の潮流について報告した。これについては、2022年度出版、中内政貴、田中慎吾編『外交・安全保障政策から読む欧州統合』大阪大学出版会所収の「AU・EU サミットに見るアフリカ安全保障―「EU 研究」と「AU 研究」の視角から―」の内容を進展させたものを報告した。 また、本件研究課題に関連する研究成果物としては、次の2点が2023年度中に出版の運びとなった。第1に、「国連平和(維持)活動とアクターの多様化」と題して、日本平和学会編『平和学事典』丸善出版、2023年所収項目として執筆していたものが出版となった。次に、「AU・国連及びAU・EU間の政策連携の現在地―アフリカの紛争対応をめぐる課題」『広島平和研究』、11号、2024年3月に所収されるかたちで、査読付論文として出版された。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度については、研究の最終年度として、国外出張1回を予定している。国外出張では、アポイントメントの状況を踏まえ、予定としてはブリュッセル(EU本部、国連関連機関等)への出張を実施する。これにより、国連関係者、もしくはEU関係者への聞き取り調査を実施し、最終的な成果への積み上げを行いたい。また、研究雑誌『国連研究』での提出済論文の最終調整と共に、英語言語による論文執筆・論文投稿も予定している。これらの作業により、研究最終年度にふさわしい、研究成果(論文)の出版、執筆を実施したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度まで新型コロナウィルスの世界的蔓延による国外渡航制限の制約により国外出張ができなかったことに起因している。研究期間の延長が許可されたことにより、2024年度には国外出張1回を予定しており、2024年度を研究最終年度として残りの予算を全額使用する予定となっている。
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