申請者の最終年度の研究は、主にこれまでの研究過程で形成した日本の対外政策決定過程モデルを事例研究によって検証することであった。これまで、独自モデルの構築と仮説の検討などは進められていたが、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、資料の収集や交渉担当者へのインタビューなどが十分実施出来ない状況にあった。最終年度には、外交史料館での資料収集やインタビューをある程度実施することが出来たが、それでもモデルと仮説の検証にとって十分なものとはならなかった。今後の研究においても、引き続き検証のためのデータ集めを進めていきたい。 以上のように、最終年度には、ようやく検証のための資料収集、インタビュー調査を行うことが可能になったが、当初計画していたレベルにはまだ届いていないのが現状である。ただし、これまでの研究によって、日本の対外政策決定過程に関する先行研究の調査と独自モデルの構築については、想定していた以上の進展があった。複数のモデルを構築し、また検証すべき問題領域として、政治・安全保障領域を付け加えることが可能になった。こうした研究は、一部、貿易交渉の事例研究に生かすことが出来たが、本研究で目指す日本の対外政策決定過程の解明にはまだ至っていない。 今後も、貿易・経済交渉の事例研究を積み重ねるとともに、政治・安全保障領域における事例研究も進めていくことで、本研究で構築した複数のモデルを検証し、早期に研究全体をまとめ上げることを目指す。
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