研究実績の概要 |
第1次世界大戦末期の1918年1月にアメリカ大統領W.ウィルソンの「14ヵ条」がハプスブルク帝国(=オーストリア=ハンガリー帝国)に与えた影響を、これまでのような帝国からの独立を目指す各民族勢力からではなく、帝国を存続させようとしていた国家指導者たちの視点から検討することを主たる目標とする本研究において、本年度は、(1)先行研究の収集と整理を行い、また(2)研究会への参加を通じて研究課題を深める知見を得た。 先行研究の収集と整理について。本年度は先行研究の収集と整理をおこなったが、なかでもオーストリア研究者H.ルンプラーの研究業績の分析を通じて、第1次世界大戦勃発以前の1914年初頭から1918年11月のハプスブルク帝国崩壊までの時期にオーストリアの歴代政権がいかなる国家体制改革を検討してきたのかの全貌が明らかになったことは、大きな収穫であった(Helmut Rumpler, "Die Todeskrise Cisleithaniens 1911-1918. Vom Primat der Innespolitik zum Primat der Kriegsentscheidung", in: Die Habsburgermonarchie 1848-1918, Bd.XI, Teil II, (Wien, 2016), S,1165-1256)。他方、彼がこの論文の中でオーストリア政府の各民族集団及び各民族系諸政党・帝国議会議員との関係に分析の重点を置いていることから、「14ヵ条」へのオーストリアの各政権の見解は不明瞭なまである。とはいえ、この論文を通じてさまざまな関連する文献の存在が分かり、その文献の収集をおこなうことができた。
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