研究実績の概要 |
本年度は昨年度に引き続き先行研究の収集と整理をおこなった(現地での史料調査は新型コロナ感染症のために実施できなかった)。 今年度は、日本において入手できる、大戦後期の2つの政権-クラム・マルティニク政権(1916年12月~1917年6月)とフサレク政権(1918年7月~1918年10月)-の研究書をもとに両政権の国制改革を整理した(Felix Hoeglinger, Ministerpraesident Heinrich Graf Clam-Martinic, (Boehlau, 1964). Helmut Rumpler, Max Hussarek. Nationalitaeten und Nationalitaetenpolitik in Oesterreich im Sommer des Jahres 1918, (Boehlau, 1965)。とくに、後者のルンプラーの研究から明らかになったことは、オーストリア政府が「14ヵ条」にほとんど注視していなかったことである。 また、今年度はオーストリア=ハンガリー帝国における代表的な帝国改革論者の一人であるA・ポポヴィッチ(Aurel C. Popovici)の「大オーストリア合州国」の著作を分析し、彼の改革論の要点を確認した(Die Vereinignten Staaten von Gross-Oestereich, Elischer Nachfolger, 1906)。彼は、二重帝国体制の変更を主張し、ハプスブルク帝国を連邦国家化することを主張した。その際の構成国は民族集団の民族的境界線を基礎とされた。ドイツ・オーストリア、ドイツ・ボヘミア、〔チェコ人が住む〕ボヘミア、クロアチアなどの15の構成国からなる大オーストリア構想がオーストリア政府にどのような影響を与えたのかについては、今後の研究で検討していきたい。
|
今後の研究の推進方策 |
現地での史料調査が、新型コロナ感染症のためにまったく行うことができていないため、研究の延長を行うつもりでいる。今年度は新型コロナ感染症の状況にも左右されるが、現地調査を行うことが可能な場合は昨年度調べることができなかったアイヒホーフの未公刊資料(オーストリア国立公文書館の戦争文書館所蔵)の調査を行う。また、C・コスネッターのザイドラー首相に関する学位論文(ウィーン大学)の調査も行いたい(Christine Kosnetter, Ministerpraesident Dr. Ernst Ritter von Seidler, (Diss.Wien, 1963/1965)。
|